ノミ・マダニ・腸内寄生虫について、ざっくりと
ノミ・マダニは、付く前から予防を
ノミは痒いだけじゃない!
ノミは吸血する時、血が固まらないように、唾液を注入します。この唾液に含まれるヒスタミンやタンパク質が、アレルゲンとなります。咬まれた皮膚には、赤斑・膨疹・出血・水疱などが見られ、さらにノミアレルギー性皮膚炎が引き起こされることも。
また、ノミは瓜実条虫を媒介します。
さらに、ノミは猫だけでなく、人も咬みます (>_<) やっかいなネコ引っかき病や、こわ~いペストも、ノミが運んでくるのです。
マダニを軽視すると大変なことになるかも!
マダニが媒介する病気は種類も多く、バベシア症、ヘパトゾーン症、ライム病、Q熱、野兎病、日本紅斑熱、等。中でも怖いのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」。猫の致死率は60〜70%、人の死亡例は今のところ50代以上に限られているものの、致死率は27%にもなるとか(注)。おそろしいですね。
(注)国立感染症研究所発表(2020/1/29)の数字。死亡者数は厚生労働省の「感染症発生動向調査」の届け出時点の情報に基づき算出されています。正確な感染者数や死亡者数はより多い可能性があるとのことです。
動物用医薬品なら、しっかり予防・駆虫できます
獣医さんで処方される一番確かな薬です。市販薬より絶対おすすめ。寄生虫を根絶したければこれらを使うのが早くて安全です。
もちろん、まず動物病院で相談・検査されることをお奨めします。副作用はほとんどないとはいえ、薬品ですから皆無とはいえません。とくに腸内寄生虫(ネコ回虫・マンソン裂頭条虫・瓜実条虫・鈎虫など)は、まず検査(検便等)をしてから虫の種類を特定し、その虫に効く薬・分量を服用する必要があります。市販の虫下しを適当に買ってきて投与する、なんてわけにはいきません。
寄生虫に寄生されると?
外部寄生虫の多くは猫の血を吸い、内部寄生虫の多くは猫の栄養を横取りします。それ以外にも様々な症状の原因となったり、他の病気を媒介したりします。また人体にも影響を与える場合があります(ノミ咬傷による強い掻痒感など)。
以下、代表的な寄生虫とその症状です。
●外部寄生虫
【ノミ】
・ノミアレルギーによるノミ刺咬性皮膚炎の発症(強い痒み、皮膚の紅斑、膨疹、出血、水疱など)。
・瓜実条虫の感染を媒介。
・猫だけでなく、人もノミに咬まれる(ネコノミは人に寄生はしない)。また猫引っ掻き病・ペストなど人畜共通感染症も媒介。
【マダニ】
・さまざまな人畜共通感染症を媒介する可能性があるので注意(日本紅班症、Q熱、ライム病、野兎病、バベシア症、その他)。
【ミミヒゼンダニ】
・耳の掻痒感。耳血腫を併発したり、慢性外耳炎を引き起こすことも。
●内部寄生虫
【猫回虫】
・元気消失、下痢・便秘、嘔吐、血便、腹囲膨大、など。
【鈎虫】
・貧血、血便やタール状下痢便、腹痛、脱水症状、など。
【条虫】
猫条虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫等。
・食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、腹痛、など。
【フィラリア(イヌ糸状虫)】・空咳、呼吸困難、突然死、など。
寄生虫感染の調べ方
【肉眼で】
ノミやマダニは肉眼でよく見える大きさです。
また、猫の被毛の中や寝床などにノミの糞を発見して寄生に気づくことも。
※猫の毛や寝床に落ちている黒っぽい点々を濡れたティッシュに乗せると、ノミ糞であれば、赤黒いシミが広がります(写真↓参照)。
腸内寄生虫の場合、猫の嘔吐物の中に虫体が混ざっている場合があります(猫回虫、マンソン裂頭条虫、など)。
また、猫のトイレや寝床で、瓜実条虫の片節が見つかる場合もあります。
【顕微鏡で】
ミミヒゼンダニは、動物病院で耳あかを取り顕微鏡で覗くことで発見することができます。
【糞便検査で】
動物病院に便を持参して、顕微鏡や検査薬を使って、寄生虫の卵などがあるかどうかを調べます。検便でわかるのは下の表の虫たち。
便はなるべく新しいものを採取しましょう。
線虫類 | 回虫の卵=猫回虫卵、犬回虫卵、犬小回虫卵 |
〃 | 鈎虫の卵=猫鈎虫卵、犬鈎虫卵 |
〃 | 犬鞭虫の卵=糞線虫および虫卵 |
条虫類 | マンソン裂頭条虫の卵 |
〃 | 猫条虫の卵 |
原虫類 | コクシジウムのオーシスト |
〃 | ジアルジアのシスト、トロフォゾイト |
〃 | 腸トリコモナスのトロフォゾイト、等 |
【参考文献】「もっともくわしいネコの病気」 矢沢サイエンスオフィス編 学習研究社
なお、検便にかかる費用は、私が通っている動物病院では1000円/1回です(検査のみ。薬代は別)。動物病院によって料金は前後すると思いますが、検査だけで1万円とかはないでしょう。
まずは1回目、寄生しているか、しているとすればどの寄生虫かを特定するための検便。薬を飲ませたあとに駆虫できたかを確かめるため、数週間後に2回目の検便。ほとんどの場合、2回の検便で済みますが、ちゃんと薬を飲み込んでいなかったなど(猫には時々あること)駆虫に失敗した場合は、成功するまで繰り返すことになります。
寄生虫豆知識
猫に見られる代表的な寄生虫たち。
いずれも動物用医薬品で予防や駆除ができますから、感染が疑われたら獣医さんにご相談くださいね。
種類 | 感染経路 | 成虫の大きさ |
ノミ | 成虫が通りがかりの猫の体に飛びつく。犬に寄生しているのもほとんどがネコノミ。 | 2mm |
マダニ | 草むらの中などで猫が通りかかるのを待つ。(→写真と除去法) | 未給血で2~3mm、給血するとアズキ大に |
ヒゼンダニ | 感染している猫との接触。 | 0.3~0.4mm |
猫回虫 | 土中の回虫卵を経口摂取する、感染しているネズミを食べる、など。母乳に回虫の幼虫が入り込むため、母猫が感染していると子猫にも感染する。(→写真) | 3~10cm |
鈎虫 | 土中の鈎虫卵を経口摂取、または皮膚から浸入。 | 1~2cm |
猫条虫 | 土中の猫条虫卵をネズミなどが経口摂取し、そのネズミなどをさらに補食することによって。 | 30~60cm |
瓜実条虫 | ノミが媒介。(→写真) | 60cm |
マンソン裂頭条虫 | 水中に落ちた条虫卵をまずミジンコが食べ、それをカエルやヘビが食べて感染し、それをさらに猫が補食することによって。(→写真) | 80~250cm |
フィラリア | 蚊が媒介。 | 12~30cm |
【参考文献】「もっともくわしいネコの病気」 矢沢サイエンスオフィス編 学習研究社