マンソン裂頭条虫の写真
マンソン裂頭条虫について
田舎で外に出る猫であれば高い確率で寄生されている寄生虫。検便で寄生を診断します。人間が見つける場合、お尻より、口から吐き出された状態で発見されることが多いようです。私も野良猫さんが吐き出したマンソン君を発見したことがあります。
分類
Cestoda 条虫網
-Eucestoda 真条虫亜網(多節条虫亜網)
–Pseudophylidea 擬葉目
—Diphyllobothriidae 裂頭条虫科
—-Spirometra erinaceieuropaei マンソン裂頭条虫
大きさなど
成虫の体長は1~2m。最大2.5mと記載された文献も。
体幅は約1cm。
片節の数は1000個にもなり、片節の縦横比は約4.5~5.5と横に広い。
感染のしかた
- 虫卵は水中で孵化し幼虫(コラシジウムcoracidium=六鉤幼虫)となる。
- その幼虫をケンミジンコ(第一中間宿主)が飲み込むと、幼虫はもう一段階成長する(プロセルコイドprocercoid)。
- そのケンミジンコをカエルなどの第二中間宿主が食べると、幼虫はさらにもう一段階成長する(プレロセコイドplerocercoid)。
- そのカエルなどを猫が補食すると、猫に感染し、やっと成虫まで成長し繁殖できる。
なんてメンドウクサイ育ち方をする虫なんでしょうか(汗)。
診断
- なるべく新鮮な便を持参し、虫卵の有無を動物病院で調べてもらう。
- 猫が吐出または排出した虫体を動物病院に持参する。
- ときどき片編が数個連なって排出されることがある。なるべく新鮮なうちにそれを獣医師に診せる。
マンソン裂頭条虫の駆虫
プラジクァンテルを皮下注射または経口で投与。経口薬:バイエル薬品「ドロンシット®錠」。
マンソン裂頭条虫の写真
猫さんがマンソン裂頭条虫を吐き出すことがあります。
私の経験では、そのとき条虫は、くちゃっと丸めた紐みたいなひと固まりで吐き出されます。
(長い虫が猫の口からだら~ん、なんてのは見たことありませんから、安心してください。)
また、お尻から排出される場合もあります。そんなときは、トイレに長く伸びたヒモみたいになります。下は、保護猫が軟便といっしょに排出したマンソン裂頭条虫。
猫さんに駆虫剤を投与すると、マンソン裂頭条虫は便と一緒に排出されます。その場合、私の経験ではたいてい、条虫の体はバラバラにくだけて原型を留めず、便を見ても、排出されたのかどうかよくわからないくらいです。
都会ではマンソン裂頭条虫は珍しいようですが、自然豊かな地域では、野良猫や捨て猫、飼い猫でも小動物を狩る子の場合は、しばしば寄生されています。当地のような田舎では、大人猫で一定期間以上を野外で暮らした猫を保護した場合、100%寄生されていました。
ですから、もしあなたが保護した猫さんにマンソン君が発見されても、「そんな長いのが?気持ち悪い!」なんて思う必要はありません。ごくフツーのことですから。駆虫すれば良いだけです。皮下注射か駆虫剤を、うまくすれば一回で、おおくても数回投与すれば終わりです。
↓の写真はいずれも、はるちん様からいただきました。保護された猫さんが吐き出したマンソン裂頭条虫です。
copyright ©haruchin c2009
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(はるちん様撮影。投稿ありがとうございました。)
参考文献
『改訂 獣医寄生虫学・寄生虫病学2』 石井俊雄著、今井壮一編 講談社
【注】
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