猫の乳腺腫瘍手術痕の経過写真

乳腺全摘手術を行ったあとの傷跡が、何日くらいでふさがり、抜糸できたか、約1か月間の経過写真を掲載します。
掲載するのは手術後の、縫合もすませた傷跡からになります。手術中の写真はありません。
同様の手術を受けることになった猫さんたちの参考になれば幸いです。
ハナ、悪性の乳腺腺癌と診断される
初めて気づいたのがハナ16歳半のとき。病理検査の結果は悪性腫瘍(涙)。
最初はまだやっと指先に感じる程度だったしこりが大きく硬くなりつつあるのは素人目にも明らかなほどで、年齢を考えれば手術をするなら今か永久にできないかだと考え、17歳3か月のときに左側の乳腺全摘手術を決心しました。
手術をしました
【注!!】
以下、手術後の写真が掲載されています。苦手な方はご注意ください。
手術当日、帰宅してすぐの写真。
私のかかりつけの病院は、このような大きな手術でも当日の帰宅が選べます(もちろん、患畜の状態によりますが)。私の考えも、猫とは入院を嫌う動物、自宅療養の方が精神的にずっと良いだろうし、その分治りも早いはずと思っています。
病院を出発したときは血もきれいに拭いてあったのですが、家についたときにはもうこの状態。長さといい、血の赤さといい、痛々しい・・・

手術後3日目
出血は止まっていますが、傷回りをゴシゴシこするわけにはいきませんから、血の色が残っています。本人は病室(ソフトケージ)をいやがって「出せ!抱っこ!」とうるさく、ほとんど一日中抱いていました。夜も一緒に寝ました。大声で鳴くほど元気ということで良しとします。

手術後9日目
周辺の血の汚れはきれいになっています。傷口の黒っぽく見えるのは手術糸と凝固した血液(かさぶた)。かさぶたはしっかり固まっていて、少し触った程度ではまだとれません。

手術後15日目
ずいぶんきれいになり、毛を剃ったところにまたうっすら毛が生えてきています。


手術後16日目
エリザベスカラーを外してよいとのお許しが出ました。ハナにはめていたエリザベスカラーは手作りで、クリアファイルのジャストサイズ、市販カラーの約1/3の重量でしたけれど、それでも邪魔だったでしょう。かさぶたもポロポロ落ちてきました。


手術後19日目
傷口はきれいにふさがって、触っても、変に固いところやヒキツリはありません。


手術後25日目
抜糸も全部すみました。傷口は触ってもすこし凹凸を感じる程度になりました。

手術後32日目
もう傷跡はほとんど目立たなくなっています。どんどん生えてきた毛でほぼおおわれました。

よく頑張りました。偉かったね。

ハナに使っていたクリアファイル・エリザベスカラーの作り方は、こちらで詳細に説明しています。よろしければどうぞ。
病理検査では「悪性度の高い腫瘍」と・・・
摘出した部分を再度病理検査に出しました。その報告書を書き出します。触って感じられた腫瘍は第3乳腺だけでしたが、第4乳腺にも広がっていました。
病理組織診断 左3-4:乳腺腺癌 mammary adenocarcinoma
摘出された左側乳腺では、第3-4乳腺において、比較的境界明瞭な結節状の腫瘍が形成されています。腫瘍は乳腺上皮の密な管状の増殖から成り立っています。
検索した乳腺では、左3-4乳腺において、悪性の乳腺腺癌が形成されています。腫瘍の境界は明瞭で、マージン部や脈管内に腫瘍性の病変は認められません。局所の摘出状態は良好ですが、悪性度の高い腫瘍であることから、引き続き、所属リンパ節の状態について、経過には注意が必要です。
病理検査/細胞診/遺伝子検査 NORTH LAB
猫の乳腺腫瘍について
以下、小動物腫瘍科専門誌『Veterinary Oncology』No.4 Oct.2014 (interzoo社)伊藤輝夫「乳腺腫瘍の疫学(猫)」を参考にさせていただきました。詳細は本誌を御入手の上お読みください。
(1)乳腺癌は皮膚癌、リンパ腫とともに雌猫で発生頻度の高い三大悪性腫瘍の1つである。
(2)乳腺腫瘍の危険因子には加齢、遺伝(品種)、雌性ホルモンへの暴露、乳腺癌の病歴がある。
(3)猫の乳腺腫瘍の約90%は癌であり、腫瘍サイズが大きいほど、予後が悪くなる傾向がある。
小動物腫瘍科専門誌『Veterinary Oncology』No.4 Oct.2014 (interzoo社)ISBN:9784899958086 page8 「乳腺腫瘍の疫学(猫)」伊藤輝夫
●猫の悪性乳腺腫瘍の年齢別分布は、10歳齢をピークに9~14歳に多い。が、シャム猫だけは7~9歳齢で多く、発症リスクも多種より2倍高く、手術後の予後も他種にくらべ悪くなる傾向があるとのこと。
●雄の罹患率は雌よりはるかに低い(雌の1/50程度)がゼロではない。
●猫の乳腺癌の13~42%は多発性で、発症猫の乳腺には別の癌が発生しやすい。
●おそらく全ての猫のなかで、乳腺癌の治療歴があり、かつ乳腺が残存している猫はもっとも発癌リスクが高い。
