ちび怪獣、大暴れ
紅葉が美しい、山里の秋。

朝、起きて外をみると、庭が掘り返されていました。

石が半分浮くほどに、土が掘られています。あちこち、ボコボコに掘られて、土や石や草の根が飛び散っています。

うちの庭だけでありません。最近、うちの畑も、ご近所の庭も、そこら中がボコボコに掘り返さているのです。
「シシ(=いのしし)や!」
と皆さん、困っています。
私はその掘り方や掘る場所から、小さな個体、おそらく今年生まれくらいの、と見当をつけて、カメラをしかけました。
数日後。写りました!それもうちの庭で。


想像以上に小さな子でした。まだやっとウリ坊の縞模様が消えたくらいでしょうか。こんな小さな子が、たったひとりで、いっしょうけんめい地面を掘っていたのです。土中のミミズや幼虫を探しているのでしょう。
が、如何せん経験不足、まだ探し方が下手すぎて、およそ非効率的な掘り方をしています。虫がいそうな場所ではなく、掘りやすい場所を選んで掘っているのです。そんなところを掘っても虫はいないだろうというような場所を、必死に掘り返しているのです。
畑にも侵入していました。まだ小さいので、ワイヤ―メッシュの15cmの目を通り抜けてしまったのです。ところが掘っていたのは防獣柵の下周辺ばかり。畑には里芋も植わっていたのに、なぜか手つかずでした。
イノシシはふつう、里芋を好んで食べます。イノシシに侵入されたら里芋畑が一晩で全滅するほど食べられてしまうのがふつうです。この子はおそらく、里芋は食べ物と教わる前に、親兄弟と離れてしまったのでしょう。迷子か死別か。すでに狩猟期間にはいっていますから、親が猟師に殺された可能性もあります。独立にはまだちょっと幼すぎると思われてなりません。
こんなに餌探しが下手で、生き延びられるのでしょうか?
イノシシの子は1歳になるまでに50%が死んでしまうそうです。イノシシの出産数は平均5~6頭と、シカよりも多産です。にもかかわらず、そこまで爆発的に増えないのは、それだけ幼獣の死亡率が高いから。イノシシの世界は過酷なのです。
例によって、とりあえず、名前をつけようか。
イノシシの名前といえば、雷蔵とか、牙王など、かっこいい名前を多く思い浮かべます。でも、こんな子。掘ってはタッタカ走り回り、また掘ってはタッタカ走り回り、小さくて、かわいくて、一生懸命で。
ふと【ホッタッタ】という名前が浮かぶと、もうそれ以外、考えられなくなりました。
よって、命名。【ホッタッタ】。
ホッタッタが掘ったのだと思うと、もう全然怒る気にはなれません。がんばれよー、がんばっていきのびろよー、と応援したい気持ちだけがつのります。もうすぐ冬。無事育ってほしいものです。
ちっちゃくても強いぞー!
まだ子供なのに。さすが猪突猛進。