動物たちの数え方
「何匹」という数え方は動物たちに対する蔑称だから使わないでほしい、「何人」と数えて欲しい、という人たちが、少数ですが存在します。その気持ちは私にもわかりますし、ああ良い人なんだなあという印象を持ちます。
とはいえ、完全同意できない部分もあり、なぜなのか、考えてみました。
以下、通常私が「動物」というときは当然ながら「ヒト(ホモ・サピエンス)」も含みますが、今回は便宜上、「動物=ヒト以外の動物界に属する生物たち、とくに何匹・何頭と数えるような生物たち」、「人間、ヒト=有史以後の現生人類(Homo sapiens sapiens)」と定義することとします。
(有史以前の人類は他の動物種たちと大差ない生活をしていたと思われるため「動物」に含めてよいかと思いますが、ここでは有史以前の人類は対象ではないため、割愛させていただきます。)
動物を「何人」と数える人は動物たちの味方
私が2002年に初めて猫のウェブサイトを作った当初から、猫(や犬)を「何匹」ではなく「何人」と数える人達はいました。それだけでなく、「猫も人間も命の重さは同じ。”匹”は蔑称だから使うな、猫愛護家なら”人”を使え」と抗議してくる人さえいました。
最近は、犬猫に対してだけでなく動物全般、とくに家畜たちに対して「匹」ではなく「人」を使う人が出てきたようです。それだけ人々が動物愛護や動物解放思想を理解するようになり、エシカル・ヴィーガン※1人口も、わずかずつとはいえ、増えてきたためでしょう。
そう、動物を「何人」と数える人は、単なる動物好きを越え、本当の意味での動物たちの味方、動物側の人が多いといって良いと思います※2。まだよく話せない幼児や、日本語を勉強中の方は別として、日本語ネイティブで「豚が3人」などと表現する人は、動物たちを人間と同等な存在とみなしている人たちでしょう。
しかし私個人的には、動物を「何人」と数える事に大きな抵抗があります。
※1:エシカル・ヴィーガンとは、動物の命を尊重し、自然環境を守るライフスタイルを送る人々のこと。人間は動物から搾取することなく生きるべきだという思想のもと、動物性食品だけでなく、衣服や日用品においても動物由来の製品の使用は実践可能な限り避けて暮らします。ほかに、地球環境を守るためのエンバイロンメンタル・ヴィーガンと、自分の健康のためのダイエタリー・ヴィーガンがいます。
※2:一部の悪徳ペット業者の中にはあえて「ワンちゃんが何人」なんて表現する奴もいます。騙されないようくれぐれも注意してください。知性も感情もある生きた動物を、身元調査もせず一見客に平気で売り飛ばすようなブリーダーや生体ペット業者に動物の味方はいません。どれほど動物愛を語っていようと、彼らにとっては所詮、金>>>動物、なのです。本当に動物が好きな人は、犬猫を守る方にまわります。決してワザワザ増やして金をとって他人に売るようなことはしません。
動物=ヒト?
動物を「何人」と数える人は、まず決まって「動物もヒトも同じ!どちらも同じ貴重な命」といいます。
でも私はまさにここ、「動物=ヒト」で引っかかってしまうのですよね。動物とヒトは同じ?
いえいえ、動物にはヒトも含まれる、でしょ?動物=ヒト(動物・イコール・ヒト)ではなく、あくまで、動物⊃ヒト(動物・含む・ヒト)。動物とヒトは同じなんて変!ヒトも動物の一種、ならわかるけど、決して、動物と人間は同じ、ではない、間違っている。
・・・なぁんて、毎回、モヤモヤ。
モヤモヤどころか、正直私には、動物もヒトも「同じ」という言い方、ずいぶんと傲慢に聞こえて仕方ないのです。なぜならそのような表現をするということは、その裏に「動物とヒトは違う、動物はヒトの下」という前提が透けて見えるような気がしてしまうからです。
いやそんなつもりではない、動物はヒトの下という一般常識に対抗して、動物とヒトは同じと言っているのだ、と反論されるかもしれません。その方達の意識としては、まさにそうなのでしょう。
それでも。私は、他人が動物を「何人」と数えているのをみると素直に嬉しいのに、自分では決して「何人」と数えたくありません。何故か。
それは、私は
「動物たちに対して、そんな失礼なことはできない」
と感じてしまうからです。
たとえば「猫が3匹/3頭」ではなく「3人」と表記されているのを見ると、私には猫をヒト扱いしているように見えてしまいます。「猫がひとり、ふたり」なら別に良いんです。「猫がみったり、よったり」も平気。むしろ表現者の猫に対する愛情さえ感じられて微笑ましい感じがします。さらに「猫が3にん」なら、「この人も考えているな」と推測されギリギリ許容範囲です。でも、「猫が3人」と漢字表記されている場合は、・・・どうしても猫をヒト扱いしているように見えてしまい、それがモヤモヤ、違和感の原因なのです。
というのも私の中では常に、動物たちとヒトの間には何の差がないばかりか、多くの動物たちはヒトなんかよりずっと上位の存在だと感じてしまっているからです。
たとえば、猫。
猫ほどに美しく、猫ほどにしなやかで、猫ほどに気高い存在を、ヒトのように愚かな生物と同じレベルに落とすなんて、そんな恐れ多いことはできない、失礼すぎる。
これが私の正直な気持ちなのです。
「匹」「疋」「頭」について
「匹」という字は、馬の尾からきた象形文字で、「ひき」という音は、馬を引くことと関係がある和語からだそうです。もとは馬や牛を数える単位として使われた言葉だったのですね。その後、馬・牛等だけでなく、虫など小さな生き物たちにも使われるようになりました。
「疋」は、もと足と同形で、あしの形にかたどり、あしの意味を表す象形文字です。
つまり「匹」と「疋」は、本来、その起源も意味も違う字なのです。が、昔は区別なく動物をかぞえる助数詞として使われていました。現在では、「匹」は正字、「疋」は俗字として扱われています。
一方「頭」は、明治以降に広まった数え方で、由来は英語のheadの翻訳からという説が有力だそうです。ただし、江戸後期にはすでに「頭」と数えた例もみられるとか。
さらに飯間さんは、「大森洋平さんの『考証要集』(文春文庫)によると、江戸後期の『北越雪譜』では、鮭を『頭』と数えた例もあるんですね。岩波文庫で見ると、たしかに〈手も濡{ぬら}さず二三頭{とう}のさけをうる事あり〉(p.134)とあります。
神戸新聞NEXT>頭、羽…「動物の数え方は死んだ後に残る部位で決まる説」は本当か? 国語辞典の編集委員に聞いた
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)2022/4/26
現在では、ヒトより小さい動物は「匹」、ヒトより大きい動物やヒトにとって価値の高い動物は「頭」、そして、羽毛をもつ鳥類たち(とウサギ)は「羽」で数えるのが一般的となっています。
ひき(匹)は蔑称か?
動物愛護家や動物解放活動家に嫌われる「匹」。悪い意味をもつ字なのでしょうか?
手元の辞書で「ひき(匹・疋)」の意味を調べたところ、国語辞典の『広辞苑』『日本語大辞典』には蔑称と感じられる表記はありませんでしたが、漢和辞典の『大漢語林』には確かに、「匹」には「動物や織物を数える単位」の他に「いやしい意」、「疋」には「こもの、小役人」という説明もありました(ページ下参照)。
「匹」を使った熟語にもそれは現れています。卑しいという意味で使われる例を拾いますと;(いずれも『大漢語林』より)
- 【匹夫】ひとりの男。また、身分の低い男。教養のない男。
- 【匹夫之勇】血気にはやる小勇。腕力などをふるう、低級な勇気。
- 【匹婦】庶民で夫のある女。また、身分の低い婦人。
【匹夫】という言い方は、『日本書紀』に見られるほど、昔からある言葉です(巻十四 雄略天皇三年八月、等)。しかも読み下し文では【匹夫】の字に「いやしひと」と振り仮名がふってあったりします。
また難読漢字で「身、匹の如ごとく」と書いて【匹如身】なんて熟語もあります。読みは「するすみ・するつみ・するつび」。意味は「資産も絆もなく、無一物なこと」(『広辞苑』より)。これもかなり古くからある言葉で、たとえば『徒然草』でも使われています。
世を捨てたる人の、万にするすみなるが、なべてほだし多かる人の、万にへつらひ、望み深きを見て、無下に思ひくたすは僻事なり。
吉田兼好『徒然草』第百四十二段、鎌倉時代後期
こうして見てきますと、やはり「匹」は蔑称といわれても仕方のない字かもしれません。
私なりの解決策は
「匹」にはあまり良い意味はない、とわかれば、私もできればあまり使いたくはありません。かといって「人」はもっと使いたくありません。動物たちを人間レベルに引き下げるなんて、申し訳なさ過ぎてできません。
そこで、私なりの解決策として、このように表現しています。
- 親しみを込めるときは、1ワン、2ニャン、3ハム(ハムスター)、4たぬたぬ(タヌキ)等。
- 愛玩動物以外、および、改まるときは、「頭」。
- 名前のついた子たちには、しばしば「名」も。
「ワン」「ニャン」等という助数詞はありませんが、日本語を解する人であればおそらく誰でも瞬時に意味はわかるでしょう。
「頭」は「かしら・いただき」の意があり、頭取・頭首・頭領・巨頭など、上に立つものをさす言葉に使われます。「名」も「なだかい・すぐれている」の意があり、名人・名声・名誉などと使われます。どちらの字にも「匹」のようなマイナスイメージはありません。また「頭」であれば動物の助数詞として一般的に使われている字であることから、アンチからの攻撃を受けにくくなるという利点もあります(「猫が3人なんて、日本語も使えないの?」等)。
繰り返し強調しますが、私は動物たちを「何人」と数えるのは止めろなんていう気持ちは微塵もありません。むしろ「動物たちの味方」と好感を持ちます。また「何匹」と数える人達を非難する気も毛頭ありません。なにしろ「匹」は正統な日本語なのです。日本最古の現存正史『日本書紀』ですでに使われていたほど古い言葉なのです。日本語を使う日本人として否定できるわけありません。
ただ自分では「何匹」も「何人」も極力避けたい、というだけの話です。
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動物を数える助数詞はこんなにあります
以下、その語の「助数詞」としての使い方に限って簡単に説明。
「人」・・人間を数える。
「名」・・人間を数える。「人」との違いは、個人の特定ができるかどうかや、改まる必要があるかどうか、等。例:「駅前の100人の群衆」「会員名簿100名」「クラスメート5人」「ご招待客5名様」等。
「匹」・・動物を数える。現代では主に人間より小さい動物に使われるが、古語では馬など大きな動物も「ひき」と数えた。
「疋」・・「匹」と同じだが現代では俗字とされ使われない。
「頭」・・動物を数える。一般に、人間より大きい動物。ほか、人間にとって価値のある動物、絶滅危惧種の動物、成長に応じて使い分ける動物、種類の異なる動物、学術の世界で頭数を表現する場合、など。
「羽」・・鳥類(とウサギ)を数える。
「尾」・・食材や商品となった魚類を数える。例:海にいる生きたマグロは「匹」、殺されてまな板上に横たわるマグロは「尾」。
「蹄」・・牛・馬など、蹄をもつ動物を数える。
「体」・・動物の形状をなしたものを数える。「小動物の骨が3体分」等。
「ひとり、ふたり、等」・・人間を数える助数詞だが、動物にもよく使われる。現代ふつうに残っているのは「ひとり、ふたり」までだが、古語や一部の方言では「みたり/みったり、よたり/よったり」も使われる。
「ひとつ、ふたつ、等」・・無生物を数える助数詞だが、昔は動物にもつかわれた。例:桐野作人編『猫の日本史』によれば江戸時代初期の軍記『大友興廃記 巻第十三』に「猛虎四つを添えられ、また大象一つを加え」という表記が見られる(洋泉社 ISBN:9784800311306 page 176)
「個」・・卵など。雌鶏は何羽、その温めている卵は何個、孵化したヒヨコは何羽。
「箇」・・『日本書紀』に駱駝・驢馬に対して「箇」の使用が見られるそうです。(cf.金川幾久世『上代日本における「匹」「疋」の漢字使用について』←関西大学学術リポジトリで検索すればネット上でも読めます。すばらしい論文ですのでぜひ。)
動物の数え方について、AIの回答は?
生成AIに質問してみました。私の周囲にいるのは動物愛護家ばかりですから、どうしても偏りが生じがちです。AIの方がより客観的な視点で回答してくれるのではないかと考えました。
なお、AIの回答は毎分毎秒変る可能性があります。回答を得た日時も正確に記します。
【質問】日本語で動物を数えるときは、どのような助数詞を使うのが正しいですか?
【回答】Copilot が送信しました: (2024/07/13 11:13am)
日本語で動物を数えるときの助数詞は、動物の種類や大きさによります。以下に一部を示します:
- 小さな動物:「匹」を使います。例えば、「3匹の猫」、「5匹のウサギ」など。
- 大きな動物:「頭」を使います。例えば、「2頭の牛」、「4頭の馬」など。
- 鳥:「羽」を使います。例えば、「3羽の鳥」、「7羽の鶏」など。
ただし、これらは一般的なガイドラインであり、例外も存在します。例えば、特定の動物は特定の助数詞と組み合わせて数えることが一般的です。たとえば、「1群の牛」や「1輪の蝶」などです。
また、動物が人間のようなキャラクターとして描かれる物語やアニメなどのコンテキストでは、「3人の豚」のような表現が使われることもあります。このような場合は、動物が人間のように振る舞っているため、「人」という助数詞が使われます。
これらのガイドラインは一般的なものであり、特定の文脈や地域によっては異なる場合もあります。日本語の助数詞は非常に複雑で、学習するのは難しいかもしれませんが、慣れると自然と使えるようになります。何か他に質問がありましたら、お気軽にどうぞ。よろしくお願いいたします。😊
↑↑↑ 【回答】ここまで ↑↑↑
【質問】猫を例えば「3人」と数えるのは変ですか?
【回答】Copilot が送信しました: (2024/07/13 08:18am)
一般的には、猫を数える際には「匹」を使います。しかし、ペットとして家族の一員として扱われる場合など、愛情を込めて「人」として数えることもあります。このような表現は、猫や他のペットへの深い愛情や親しみを示すもので、日本では一般的に理解されています。
ただし、公式な文書や科学的な文脈では、「匹」を使うのが適切です。また、人によっては「人」と数えることを奇異に感じる場合もありますので、その点を理解しておくと良いでしょう。不確かな場合は、必ず確認することをお勧めします。😊
↑↑↑ 【回答】ここまで ↑↑↑
【質問】豚を「3人」等と数えるのは変ですか?
【回答】Copilot が送信しました:(2024/07/13 11:02am)
日本語では、動物を数えるときには通常、「頭」や「匹」などの助数詞を使います。例えば、「3頭の豚」や「3匹の豚」のように表現します。「人」は人間を数えるときに使う助数詞であり、通常は動物を数えるのには使いません。したがって、「3人の豚」という表現は一般的ではなく、少し変な感じがします。ただし、豚が人間のようなキャラクターとして描かれる物語やアニメなどのコンテキストでは、「3人の豚」のような表現が使われることもあります。このような場合は、豚が人間のように振る舞っているため、「人」という助数詞が使われます。しかし、一般的な文脈では、「3頭の豚」や「3匹の豚」のように表現するのが適切です。ご質問が他にもありましたら、お気軽にどうぞ。よろしくお願いいたします。😊
↑↑↑ 【回答】ここまで ↑↑↑
【質問】家畜の数え方、例えば「牛が3名」のような表現は変ですか?
【回答】Copilot が送信しました: (2024/07/13 11:21am)
はい、一般的には「牛が3名」という表現は少し変です。「名」は通常、人間を数えるときに使う助数詞です。家畜や動物を数えるときは、「頭」や「匹」などの助数詞を使います。したがって、「3頭の牛」や「3匹の牛」のように表現するのが一般的です。
ただし、物語やアニメなどで動物が人間のようなキャラクターとして描かれる場合は、「3名の牛」のような表現が使われることもあります。このような場合は、動物が人間のように振る舞っているため、「名」という助数詞が使われます。
しかし、一般的な文脈では、「3頭の牛」のように表現するのが適切です。何か他に質問がありましたら、お気軽にどうぞ。よろしくお願いいたします。😊
↑↑↑ 【回答】ここまで ↑↑↑
【質問】動物という言葉には、通常、人間も含まれますか?
この質問については、あえて英語で聞いてみました。八百万の神を祭ってきた日本人と違い、キリスト教等では人間は神が自分の姿に似せて創造した特別な存在とされ、他の生物とは厳格に分けられる傾向があります。英語の方がより世界的な視野で回答を得られるのではないかと考えました。
【質問】Does the word “animals” usually include human beings?
【回答】Copilot が送信しました:(2024/07/13 08:15am)
Yes, in biological terms, humans are considered a type of animal. Specifically, humans belong to the animal kingdom (Animalia) and are classified as mammals. This is because we share many biological characteristics with other members of the animal kingdom, such as multicellularity, the ability to move voluntarily, and the need for food for energy.
However, in everyday language, people often use the term “animals” to refer to non-human animals only. This is more of a cultural or linguistic distinction rather than a scientific one. So, whether humans are included when someone says “animals” can depend on the context. It’s always a good idea to clarify if you’re unsure.
【和訳】
生物学的な観点から見ると、人間は「動物」に分類されます。具体的には、人間は動物界(Animalia)に属し、哺乳類として分類されます。これは、私たちが他の動物界のメンバーと多くの生物学的特性を共有しているためです。例えば、多細胞性、自発的な動き、エネルギーのための食物の必要性などです。
しかし、日常的な言葉遣いでは、「動物」という言葉はよく非人間の動物だけを指すために使われます。これは科学的な区別よりも文化的または言語的な区別です。だから、「動物」という言葉が人間を含むかどうかは文脈によります。不確かな場合は、必ず確認することをお勧めします。
↑↑↑ 【回答】ここまで ↑↑↑
AI回答のまとめ
やはり、動物を何人・何名と数えるのは、一般的には違和感が感じられる表現とされているようです。
ところで、なぜ日本語の回答はどれも😊で締めくくられているのでしょう?日本人の性格をもAIが考慮しているということでしょうか。😀
各辞書による「ひき(匹・疋)」
まず、国語辞典の『広辞苑』と『日本語大辞典』。匹の字に蔑称を感じさせる記述はありません。
ひき【匹・疋】
『広辞苑 第六版』岩波書店
(1)獣・鳥・魚・虫などを数える語。
(2)銭を数える語。古くは鳥目(ちょうもく)一〇文を一匹とし、後に二五文を一匹とした。
(3)布帛二反を単位として数える語。→き(匹)
ヒキ【匹】
『日本語大辞典 第二版』講談社
〔音〕ヒツ・ヒキ〔訓〕ひき
(『常用漢字表』では、訓扱い)
(1)獣・魚・虫などを数えるのに用いる。〔比較〕頭とう。〔用例〕(助数)二匹の猿。
(2)布二反をまとめて数えるのに用いる語。〔用例〕(助数)絹二〇匹。
(3)昔の金銭の単位。銭ぜに一〇文、また、二五文。〔用例〕(助数)金一〇〇匹。→ヒツ【匹】
漢和辞典の『大漢語林』には、匹に「いやしい意」、疋に「こもの。小役人」が載っていました。
【匹】ヒツ・ひき
《匹》(漢)ヒツ(呉)ヒチ
[慣]ヒキ(1)ヒキ。(ア)織物を数える単位。二反(四丈)をいう。(イ)牛馬などを数えるたんい。
(2)たぐいたぐひ(ア)つがい。つれあい。(イ)対ツイをなす二つのもの。(ウ)とも。仲間。同類。
(3)たぐうたぐふ(ア)つりあう。(イ)つれそう。ともなう。
(4)ひとつ。ひとり。転じて、いやしい意。「匹夫」
(5)あひる。[国]ヒキ。
(1)織物二反(一反は鯨尺の二丈八尺)の称。
(2)動物を数える単位。
(3)昔の金銭を数える単位。十問または二十五文。[古訓](名)トモ・フタツ・カツ・メクル・ナラフ・アツ・タクラフ・トモカラ・ヒトコロヘリ・ヒトコロリ・ムラ・ヒトシ・タクヒ
[難訓]匹他ひきた・匹如身するすみ・匹相ひきそ・匹壇ひきだ
[解字]象形。金文でよくわかるように、馬の尾の象形で、馬を数えるときの単位として用いる。また、布地の長さを占める単位としても用いる。また、比に通じて、たぐいの意味を表す。
▼仇匹キュウヒツ・偶匹・好匹・乗匹・儔匹チュウヒツ・馬匹・妃匹・良匹・儷匹レイヒツ※以下、匹からはじまる語とその読みだけを書き出します。
【匹禽】ヒッキン
【匹偶・匹耦】ヒツグウ
【匹群】ヒツグン
【匹合】ヒツゴウ(ガフ)
【匹儕】ヒッサイ
【匹士】ヒッシ
【匹似】ヒツジ
【匹処(處)】ヒッショ
【匹庶】ヒッショ
【匹雛】ヒッスウ
【匹儔】ヒッチュウ(チウ)
【匹鳥】ヒッチョウ(テフ)
【匹敵】ヒッテキ
【匹馬】ヒツバ
【匹配】ヒッパイ
【匹夫】ヒップ
【匹夫ノ勇】ヒップノユウ
【匹夫匹婦人】ヒップヒップ
【匹夫不可奪志】ヒップもこころざしをうばうべからず
【匹夫無罪、懐璧其罪】ヒップつみなし、たまをいだいてそれつみあり
【匹婦】ヒップ
【匹練】ヒツレン『大漢語林』大修館書店
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【疋】
[一](漢)ソ(呉)ショ
[二](漢)ガ(呉)ゲ
[三](漢)ヒツ(呉)ヒチ
[慣]ヒキ[一](1)あし(足)。
(2)しるす(記)。
(3)こもの。小役人。=胥ショ。[二]ただしい(正)。=雅
[三](1)匹と同字。
(2)ちいさい(小)。[国]ヒキ=匹
(1)古くは銭十文を一疋とし、のちには二十五文を一疋とした。
(2)反物二反を単位として数える語。[古訓]カタフク・コホス・ソル
[難訓]疋壇ひきた・ひきだ
[解字]象形。もと足と同形で、あしの形にかたどり、あしの意味を表す。雅の省略体の牙を疋に誤り、雅の意味にも用いる。疋を音符に含む形成文字に、胥ショ・楚ソ・疎・礎・糈ショ・蔬ソ・醑ショなどがある。※以下、疋からはじまる語とその読みだけを書き出します。
【疋鳥】ヒッチョウ(テウ)
『大漢語林』大修館書店
【疋馬】ヒツバ
【疋帛】ヒッパク
【疋夫】ヒップ
余談ですが
英語なら、horse馬も、cat猫も、rabbitアナウサギも、swan白鳥も、humanヒトも、すべて one,two,three・・・ですよね。しかし日本語はいちいち助数詞がつく。
その理由で、面白い説を知りました。
「日本語は全ての名詞を不可算名詞として扱っているから」
というものです。
可算名詞とは、数えられる名詞のことです。例えば、A man, Two catsなど。
不可算名詞とは、数えられない名詞のことです。例えばWater はそのままでは数えられませんよね。ですから A cup of water, two cups of waterと数えることになります。
「匹、頭、人」など日本語の助数詞は、上の例でいう cup だということです。なるほどねと思いました。