猫砂やペットシーツは災害時に非常用トイレとして使えるか(8)

災害時の緊急用トイレのイラスト:©いらすとや

←前のページ:携帯トイレセットや非常用トイレ凝固剤を使ってみる

「トイレが使えない!」そんな非常事態は意外と身近です。地震や台風での大規模断水をはじめ、大雪で近所の電柱が倒れて停電・断水したり、大寒波で水道管が破裂したり、集中豪雨で逆流したり、割れて水漏れしたり、詰まって流せなくなったり・・・

断水でトイレが使えないときに参考にしてください。

総括

今回、実験に使った素材は以下の通りでした。

【猫砂】

  • 紙製猫砂:ブルーの紙砂(ペットプロジャパン)
  • 木製猫砂:hinoki ひのきの猫砂(ペットプロジャパン)
  • おから製猫砂:ニオイをとるおから砂(ライオン商事)
  • ベントナイト製猫砂:ニオイをとる砂(ライオン商事)
  • シリカゲル製猫砂:消臭砂シリカゲルサンド(アイリスオーヤマ)

【ペットシーツ】

  • 薄型ペットシーツ:クリーンペットシーツ ES-N100(アイリスオーヤマ)
  • 厚型ペットシーツ:香り付きウルトラシーツ US-88F(アイリスオーヤマ)
  • 超厚型ペットシーツ:超厚型ペットシーツ(ネット限定)(アイリスオーヤマ)

【猫システムトイレ用シート】

  • 1頭用:ニャンとも清潔トイレ 脱臭・抗菌シート(花王)
  • 複数猫用:ニャンとも清潔トイレ 複数ねこ用脱臭・抗菌シート(花王)

【人間用おむつ、ナプキン】

  • 新生児用おむつ:ムーニー エアフィットお誕生~3000gまでの新生児用(ユニ・チャーム)
  • 大人用おむつパッド:ライフリー 補助パッド(大人用紙おむつ)吸収回数の目安排尿2回分(ユニ・チャーム)
  • 生理ナプキン:ソフィP6n ソフイはだおもい極うすスリム 羽なし21cm多い昼~ふつうの日用 極うすスリム(ユニ・チャーム)

【キッチンタオル、トイレットペーパー、ポリ袋、ペットボトル】

  • キッチンタオル:エリエール peach(大王製紙)
  • トイレットペーパー:スコッティ フラワーパック 3倍長持ち ダブル(日本製紙クレシア)
  • ポリ袋:Home Make 強力素材保存袋大 ホームメーカーシリーズKH-18 320mm×380mm×暑さ0.010mm(ハウスホールドジャパン)
  • ペットボトル:1500ml用(メーカー不明)

【携帯トイレセット、凝固剤】

  • 携帯トイレセット:携帯トイレセット(尿専用)KTS3P(アイリスオーヤマ)
  • 凝固剤:非常用トイレの凝固剤(サンコー)

緊急時でも非常用トイレに使うことはお勧めできないもの

最初に、これは使えない/使いたくないと思ったものを実験順に並べます。

【ベントナイト製猫砂】

かっちり気持ちよく固まりますし、取り出すときの不潔感はほぼゼロ、消臭効果は猫尿で実証済み、猫には一番人気の砂と、長所が多い素材ではありますが、なんせ重い!1.5kg分の水分を吸収させて4kg超というのは重すぎます。燃えるゴミに出せないというのもネックです。

【生理ナプキン】

実験前から想定されたことではありますけれど、やはり吸水量が少なすぎました。膨大な数が必要となります。また処分するときも、たとえ吸収させているのが水や尿だったとしても、透明なポリ袋にそのまま入れる事には強い抵抗を覚える女性が多いと思います。なぜかオムツよりイヤなんですよね。中が見えない袋を用意するか、新聞紙で包むなど、ひと手間が必要となります。

【キッチンタオル、トイレットペーパー】

一度吸水させてもポタポタ落ちてくるし、色がそのまま出て恥ずかしいし、大量に必要だし、消臭効果も期待できそうにないし、物資不足時には別の用途にもっと使いたいし・・・。

【ポリ袋】

これは素材がどうのというより、もう生理的にイヤです。あまりに露骨にそのまんま「オシッコ」なので。しかもポリ袋なんて、ちょっと突いただけで破れます。ニオイも漏れそう。ヤダ。

もっとも気持ちよく使用できる素材は?

トイレが使用できない。これって、ものすごいストレスですよね。そういう緊急時って、トイレだけでなく、他にも災難や心配事が山積みな場合が多いですし。出す時くらい、少しでも気持ちよく過ごしたいものです。

排尿時の快適さなら【木製猫砂】が断トツだと思う

今回の実験に使った「hinoki ひのきの猫砂(ペットプロジャパン)」を含め、木製猫砂は通常「木の香り」がします。ほとんどがヒノキなど爽やかな針葉樹の香り。しかも消臭効果は、人間尿よりもっと臭いといわれている猫尿で実証済み。つまり、トイレが流せない非常事態だというのに、あの独特なトイレ臭がしないどころか、ヒノキの香りがほんのり漂うのです。これはポイント高いですよね。

排泄物を取り除くときに容器の上にかがみ込んでもヒノキの香りです。勢いよく排尿しても飛び散りは砂で抑えられ、尿色は木砂の中では目立たず、濡れたところだけ固まって取り出しやすく、不潔感ほぼゼロで掃除できます。

一方、木製猫砂に限らず猫砂の欠点は、容量が大きくなることだと思います。そのため常備するにも使用後も他の素材より多くの場所が必要となります。また他の素材より重量があります。保管場所と重量の問題が解決できるなら、木製猫砂は最も使い心地の良い非常用トイレとなるでしょう。しかし一般家庭では場所や重量は無視できない要素ですから、その辺の兼ね合いがどうなるかだと思います。

なお、【紙製猫砂】の中にもラベンダーやせっけん等、良いにおいの砂があります。【おから製猫砂】も、猫にはとても使いやすい良い砂です。【シリカゲル猫砂】の毎回の掃除は不要という特徴も魅力的。しかし今回は、それぞれの性質や必要量、価格などを勘案、人間用には【木製猫砂】が最適と判断しました。

【厚型ペットシーツ】の「毎回使い捨て」もお勧め

【厚型ペットシーツ(レギュラーサイズ)】は、人間の1回分の尿をしっかり吸収してくれる上、おむつ類より広いので周囲にもれにくいです。平らなシートでどんな形状の容器にもセットしやすいという利点もあります。使用後2~4つに折れば尿を吸収した部分が見えません。もともとペットの尿用ですから消臭効果も期待できます。価格は1枚20~30円とリーズナブル。もちろん、燃えるゴミOK。ほぼ完ぺきではないでしょうか。

【システムトイレ用シート】【大人用おむつパッド】も使いやすいが

【システムトイレ用シート】や【大人用おむつパッド】もよく吸収し、ニオイも抑えてくれる優れものです。一人暮らしの方ならとても使いやすいでしょう。

でも、同居するご家族がいる場合は配慮が必要かも。

というのも、どちらも吸収量が多い素材だからです。物資不足の非常時に、これだけ良く吸ってくれるものを、1回毎に使い捨てにするのはもったいない。ふつうに考えれば複数回使いたいですよね。

しかし、ですよ。女子高生や若いお嫁さんは、自分がしたあと、父親や同居の義父が同じシートにおしっこする、そんなの考えただけでゾゾ~ッとしませんか?男性にはわからないかもしれませんが、多くの女性にとってこれは恥辱以外の何ものでもありません。結果、もったいなくても使い捨てにするか、我慢しすぎて膀胱炎になるか。

それなら厚型ペットシーツを毎回使い捨てにする方が気持ち良いだろうと、私は思うのです。

使用後の処理が楽なのは?

保管が楽なのは「水分を固めるor閉じ込める」機能のある素材

各種猫砂、ペットシーツ各サイズ、システムトイレ用シート、赤ちゃん用/大人用おむつは、一度吸収した水をしっかり閉じ込めますので、保管中に漏れる心配がなく気楽です。もちろん、携帯トイレセットと凝固剤も。

消臭力が優れているのは、各種猫砂と、システムトイレ用シートだと思います。どちらも1週間~商品によっては1カ月も継続して使い続けることを想定して開発された商品ですから消臭力も強いです。ペットシーツや人間用おむつは、毎日取り替える事を前提に開発されたものであるため、そこまでの消臭力は想定されてないだろうと思われます。私自身の経験でも、ペットシーツは猫砂・システムトイレ用シートほどの消臭力はないと感じています(人間用おむつは使ったことが無いのでわかりません)。

保管場所のスペースでいえば、猫砂は、使用前も後も、どの素材より広い場所が必要となります。ペットシーツ・おむつ等であれば、使用前は小さく畳んでおけます。

処分が簡単なのは「燃えるゴミOK」+「軽い」

今回の実験素材のうち、燃えるゴミに出せないのはベントナイト製猫砂、自治体によるのはシリカゲル製猫砂。この2つ以外は燃えるゴミに出せるものです。

重量は、猫砂はどうしても重くなります。中でもベントナイト製猫砂は倍以上の重さとなり、しかも燃やせないので、処分には苦労すると思います。

実は【ペットボトル】が保管も処分も一番簡単

使用後の取り扱いでいえば、実は【ペットボトル】が一番簡単?漏れないし、コンパクトで、立てても倒しても積み上げても保管可能、別途ゴミ袋等を用意する必要もありません。

また処分方法も、トイレが復旧すれば中身を流しておしまい。所定の場所まで運ぶ必要がある場合でも、その重量は中身重量+約25g(350ml)~約50g(2ℓ)と軽いです。

ただし、ペットボトルって尿がそのまんま見えちゃうんですよね。その辺の心理的ストレスをどう考えるか(災害時は可能な限りストレスを減らさないと体がもちません)。また、使用後のペットボトルをきれいに洗ってリサイクルに出す手間をとるかどうかも、考慮の必要があるかもしれません。私自身としては、ペットボトルは本当にギリギリな最終手段として以外は使いたくありませんね・・・

非常時のために備えやすいのは?

コンパクトさなら圧倒的に【携帯トイレセット】【凝固剤】

【凝固剤】はもっともコンパクトですが、別途ゴミ袋(ポリ袋)も必要となります。

ペットがいてもいなくても【ペットシーツ】は常備品としてお勧め

ペットがいるご家庭ならペットシーツは常備品。多めに購入してローリングストックしましょう。

また、ペットがいないご家庭でもペットシーツの常備はお勧め。だってペットシーツってトイレ以外にも色々な使い道がある便利グッズなんです。買っておいて損はないと思います。

コスト的には?

今回の実験で、水1500mlの処理にかかった費用を表にします。(処分時に入れるゴミ袋等は含まず)。

※以下は今回の実験での購入価格(2022年秋)です。同様な商品でもメーカーや銘柄により価格は大きく異なり、また価格は常に変動しています。参考資料としてご覧ください。

素材1パック
内容量
ℓ/枚
単価
使用量
ℓ/枚
使用価格
紙製猫砂
(ℓ)
7127101.74.3437.4
木製猫砂
(ℓ)
7677109.53.15345.1
おから猫砂
(ℓ)
7125142.42.7384.5
ベントナイト
(ℓ)
7125142.43.25462.8
シリカゲル砂
(ℓ)
89551793.5626.5
薄型ペット
シーツ(枚)
129810012.9810
15
129.8
194.7
厚型ペット
シーツ(枚)
19588822.253
5
66.75
111.25
超厚型ペット
シーツ(枚)
221010022.12
5
44.2
110.5
システムトイレ
1頭用(枚)
11388142.251142.25
システムトイレ
複数猫用(枚)
13098163.631163.63
新生児用
おむつ(枚)
7673025.565
10
127.8
255.6
大人用
おむつ(枚)
9223625.62
5
51.2
128
生理ナプキン
(枚)
347271335449.8
キッチン
タオル(枚)
49501165165
トイレット
ペーパー(枚)
7673230.3380114
ポリ袋
(枚)
140502.8514
ペットボトル
(ml)
01500010
携帯トイレ
セット(個)
5473182.33
5
547
911.6
凝固剤
(個)
4921049.22
3
98.4
147.6
  • 単価=1リットル/枚/個の価格
  • 使用量、使用価格=1500mlを吸水させた場合
  • 数字が2段ある場合、上段は使用枚数(個数)を最小限にした場合、下段は300mlずつ使い捨て/または使いやすい程度に余裕を見た場合
  • ペットボトルはリサイクル品につき0円とみなす

総合結果

使用時の使い心地、周辺にこぼれやすいか、片付けやすいか、清潔感、臭い、使用後の保管法やスペース、処分方法、常備しやすさ、価格、心理的なもの、等。全てを勘案の上、私が出した結論は;

一般家庭において、緊急時の非常用トイレに最適な素材は【厚型ペットシーツ】(レギュラーサイズ)である」

【ペットシーツの良いところ】

  • それなりの面積のある平らなシートなので、様々な容器にセットしやすい。
  • 尿量が多目でも成人の1回分を気持ちよく吸収してくれる。
  • 裏側には水分がしみないので素手でもそれほど不潔感なく取り出せる。
  • 一度吸収した水分をしっかり保水して漏れない。
  • 臭いもおさえてくれる。
  • ゴミ袋にきっちり詰め込め、場所が少なくて済む。
  • 燃えるゴミで捨てられる。
  • 入手しやすく、価格も手ごろ。
  • ペットのいる家庭なら常備品。
  • ペットがいない家庭でも色々使えて便利。

【良くないところ】

  • 保管にスペースが必要。猫砂ほどではないが、コンパクトさでは携帯トイレセットや凝固剤にはかなわない。

※この商品をネットショップで探す[PR]
Amazon  |  楽天市場  |  Yahoo! Shopping  |  アイリスプラザ

ウンチ専用袋もあります

以上の実験は尿専用でした。では、ウンチは?

もちろんこれも、ペット用品に良い物があります。ウンチのニオイを抑えてくれる機能付きの袋。安いし、防臭力があるし、ふつうのポリ袋よりこちらの方が良いと思いますワン。ただし、人間用にはなるべくLサイズ(大型犬用)を用意しましょう。人と小型愛玩犬では体の大きさが違いすぎます。

※関連商品をネットショップで探す[PR]
Amazon.co.jp  |  楽天市場  |  Yahoo! Shopping  |  アイリスプラザ

災害時にトイレ問題は深刻

「災害時のトイレ問題は、命にも関わる」と警鐘をならす専門家は少なくありません。

  • 水分不足による健康問題(脱水症、エコノミークラス症候群、等)=トイレにいく回数を減らそうと水分摂取を控えることで発生
  • 感染症が発生しやすくなる
  • トイレが不便だったり汚いことによる精神的苦痛=そうでなくとも災害時は精神的に不安定になりがち。トイレ問題がそれをさらに悪化させる。

災害時のトイレ問題について、わかりやすく書かれた↓記事↓があります。ぜひお読みください。

サストモー知る、つながる、はじまる>『災害時、トイレがあなたの命を脅かす。もしものための「排泄」への備え
https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/106.html

撮影に協力してくれたニャンコ

くるるん(♂)です=^_^=

page 1 | page 2 | page 3 | page 4 | page 5 page 6 | page 7 | page 8

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA