疥癬タヌキ兄弟(4)
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明るい時間に来てくれたので鮮明な写真が撮れました。
ジャンジャンは軽症でしたから、「毛並みがきれいになったな」程度の違いなのですが、
劇的に改善したのがミンミン。
あのハゲハゲだった小さな子が、よくぞここまで回復してくれた!
もー、嬉しくて。
こんなにハゲハゲだった子が、

ここまで毛が生えました💛
手前の、鼻が白く脱色してしまっている子がミンミンです。後ろがジャンジャン。



よかったなあ!
しばしば、「野生動物に人が介入してはいけない」という人がいます。
かわいそうでも見殺しにしろ、それこそが自然の摂理だと。
でも、もし、人が介入してはいけないのであれば、まず、その動物が住む環境を、人の全く介入していない以前の自然に戻さないと理屈が通らないと思います。
生息環境は好きなだけ介入する、しかし、その環境で苦しんでいる野生動物は見殺しにしろって、あまりに勝手すぎませんか?
そ・し・て💛
ついに!
最後の投薬が終わってしまいました。
これからゆっくり野生復帰を図ります。といっても、野生状態のまま、餌やりで投薬していただけですから、すでにほぼ野生状態といってよいくらいで、心配はしていません。今までの「給食(一食分)」を「おやつ」に格下げするだけです。
最新の写真です。(10月11日、投薬後51日)
ジャンジャンはふつうのタヌキ顔ですけれど、ミンミンはちょっと特徴的。
めちゃくちゃ可愛いと思いません?



こんなにハゲハゲでしたが、

投薬から51日でこんなに生えました。 タヌキの毛の生え方は、速度といい、ふさふさ度といい、すごすぎる!薄毛/ハゲでお悩みの皆様、タヌキに頭を舐めてもらったら、あるいは毛がはえるかもしれませんよ? ニャハ❣

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タヌキにペットフードを与える危険性について
昔(20年くらい前)は、タヌキにドッグフードをあたえると疥癬症にかかりやすいと聞きました。最近はキャットフードが危ないと言われているようです。
ペットフード業界の進歩で、フード類がそれぞれ、よりイヌまたはネコに適した内容に改善されたからかもしれませんし(タヌキはイヌ科)、あるいは社会状況の変化で、外飼いのイヌが減る一方、地域猫活動等で外に置かれるキャットフードが増えたからかもしれません。
たとえば、NPO法人ジャパンワイルドライフセンター(JWC)はクラウドファンディングの記事『野生動物の保護について知っていただきたいこと|野生動物への餌付けが死因に繋がる可能性』(2023年06月01日付)で、こう書いています。
そして、この疥癬症ですが、タヌキが発症・悪化させてしまう要因の一つに、ペットフード(特にキャットフード)を食べてしまったことがあるのではないか、と私達は考えています。(中略)
https://readyfor.jp/projects/jwc2/announcements/265404
タヌキはイヌ科の雑食の動物で、自然の中では柿やイチジクといった果物や昆虫、動物の死肉、木の実など、いわゆる粗食で生きています。そんな彼らにはペットフードは体に合いません。
しかし、香りや味の良いペットフードはタヌキにとっては魅惑的な餌である為、慢性的にペットフードを求めるようになります。
そうしてペットフードを常食したタヌキは、体に合わない餌により内臓にも負担がかかり、免疫力が低下、それにより疥癬症を発症・悪化させ、身動きがとり辛くなることで手近な確実に得られるペットフードを求めてしまい……という、悪循環が生まれているのではないかと当団体では推察しています。
一般的には『群れで行動する為に感染が広がりやすい』、『ゴミ漁りで不適切なものを食べた為に発症する』ともいわれていますが、当団体でここ十年ほど疥癬症のご相談者にヒアリングを行ったところ、ゴミが荒らされていたというお話はありませんでした。
その代わりに、「外猫の餌を食べに来ていた」もしくは「ネコの餌をあげていた」という回答が、9 割以上となっています。
タヌキの疥癬症は、解明されていることが実は少なく、ここまで重篤化する原因も未だ不明とされています。
私は獣医師でも科学者でもありませんし、ドッグフードやキャットフードと疥癬症との関係についてはわかりません。ですから、あくまで私の経験からの印象ですが、私はキャットフードは最適ではないだろうが、そこまで悪くはないのではないかと思っています。
その理由は、何より、私の前に現れる多数の疥癬症タヌキたちの実在です。
私が住んでいるのは、定住者軒数一桁の限界集落で、次に人が住んでいるところまで約1kmという山の中。当然ながら、タヌキたちが日常的にペットフードにありつける環境では全然ありません。また観光客がくるような場所でもありません。私が(治療目的で)与える場合以外は、タヌキたちは人工的なペットフードとはまったく無縁の生活なはずです。
にもかかわらず、つぎつぎと疥癬タヌキが現れます。毎年のように違う個体を治療しています。もし一部で言われているように「自然な食事環境ならタヌキは疥癬にかからない」が本当なら、こんな山の中に疥癬タヌキはいないはずです。でも実際には、こんなに多いのです。
不思議なことに、タヌキたちと一緒にペットフードを食べるアナグマ・キツネ・ハクビシンたちが疥癬にかかっているところは見たことがありません。タヌキとアナグマはしばしばひとつのお皿から分け合って食べるほどですが、ひどい疥癬症タヌキの横でアナグマはフサフサしたままです。
どうもタヌキが特別に疥癬に弱い体質なのだとしか思えない状況です。
私が思うに、人々が山の中で疥癬タヌキを見かけないと思うのは、
- 野生動物は病気になると身を隠す。疥癬タヌキも人目を避けて穴などに引き籠もり治そうとする。
- 健康な個体でも生き延びるのが難しいのが山の中。疥癬にかかった個体はじきに衰弱して数週間で人知れず死んでしまう。まして冬季を生き延びられる疥癬タヌキはほぼいない。
- 田舎ではタヌキは害獣扱いされることも多く、病気でも誰も気にかけないし、そもそも病気とは気づかない。だから情報発信も少ない。
一方、JWCに疥癬タヌキの救助を求めてくるような地域は、以下のような場所と考えられます。
- 人目につきやすい(ある程度以上の人家がある地域)。
- キャットフードの餌場はタヌキも集まりやすく、1頭でも罹患すると広がりやすい。
- 高栄養なフードのおかげで、丸ハゲになるほど悪化してからもそれなりの期間を生きながらえることが可能。
- そこにいけば食べられるとわかっているので、疥癬にかかっていてもタヌキは引き籠もらず、出歩く。
- 外猫に定期的に給餌するような人は一般に動物全般にやさしいから、タヌキの疥癬にもすぐ気がつき、情報発信する。

撮影
とはいえ、あまりに人工的なペットフードという食べ物は野生のタヌキには最適ではないだろうな、とも思っています。できるだけ自然なものを食べて生きてほしいです。
そうわかっていながら、なぜキャットフードやパンを与えるか。それは、野生タヌキにとって、それらが「美味しい食べ物」らしいからです。
私は疥癬タヌキを治療するとき、タヌキを保護(捕獲)はしません。野生のままくらしてもらいつつ、パン等に薬を混ぜて飲んでもらっています。そのためには、野生でありながら毎日のように我が家に通ってもらわなければなりません。
つまり、通っちゃうほど魅力的な”何か”が必要ということ。
で、仕方なく、甘いパンやキャットフードでタヌキたちを釣っているわけです。
疥癬が治れば、フードを減らしていって、野生にもどるように調整します。ブンブンとその仲間たちも、サンサン・コイコイのペアも、そうやって通ってこなくなりました。
しかし一方、当地は冬になれば大雪が降る地方です。積雪の中、食べるものを見つけられずに餓死するシカ・タヌキ・キツネ・ハクビシン・他多数・・・
そんな過酷な季節や、病気怪我で衰弱して山で食べ物を見つけられなくなると、タヌキたちはちゃんと覚えていて、また庭先で待っていたりします。そんなときは餓死しないよう加減しながら給餌します。
人間のせいで、日本中の無数の野生動物たちが苦しめられています。せめて私のまわりにいる子たちくらいは助けたいじゃありませんか。
野生動物達と、ごく自然に共存できる、そんな世の中になってほしいものです。
猫とタヌキが一緒に庭にいるの図。

動画をアップしました。
やっと動画を編集しました。ご覧いただければ幸いです。
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😥😥😥ボヤキ😥😥😥
YouTubeにアップして、数日。
やっぱり来ました。「餌やるな」コメ。
野生動物に食べ物を与える動画をアップしますと、「いいね」の数の1/10以下ではありますが、「よくないね」も必ず一定数つくんですよね。それから「エサやるな」「野生動物に人間は関わるべきではない」等のコメントも(承認しませんから表には出ませんが)。
たとえばもし、ヘビがカエルを飲み込もうとしていて、カエルが可哀想だと助け出す、そのような介入を人間はすべきではないと、私も思います。
けれども、なぜ病気の野生動物を治療してあげてはいけないのですか?
人間は野生動物を「害獣」だと殺しまくり、彼等の生息地に入り込んで好き勝手し、車で轢き殺し、自然から搾取し続けています。今はやりのキャンプだって、クロスカントリースキーだって、ダイビングだって、登山だって、モトクロスだって、釣りだって、打ち上げ花火だって、ぜんぶ野生動物達の環境に泥足ではいっていくものです。さらに、ソーラーパネルだって、道路だって、トンネル掘りだって、法面補強工事だって、堰堤だって、河岸工事だって、宅地造成だって、林業だって、農業だって、広域防獣柵設置だって、どれもこれも、野生動物達の生活に影響を与えるものです。人間はあらゆる方向から彼等野生動物達に干渉しまくっているんです。
なのに、タヌキの1頭や2頭を治療しただけで、たちまち罵倒される。
いつから日本人の心はこんなに身勝手に貧しくなってしまったの?
疥癬症のタヌキの治療について
私が使っているのは犬用に開発された薬です。どこの動物病院にも置いてあるような商品です。
【メールフォーム】にてご連絡いただければ、薬の名前や与え方について等、私の知っている限りを御伝授いたします。(獣医師ではありません)
(世の中には野生動物を嫌う人が多く、処分・虐待目的で近づき方を検索する人もいます。そういう輩に利用されたくないので、薬物の仕込み方とか餌付け方法をこのような公開の場に書きたくありません。お手数をおかけしますが、ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。)