ネットに絡んだ雄鹿

うちから1kmほどのところをお散歩中、愛犬ゴンが、山の方を気にするので見てみたら

雄のニホンジカが、ネットに絡んで、暴れていました。

ネットに絡んだ雄のニホンジカ
ネットに絡んだ雄のニホンジカ

よく見ればロープが首の方にもかかっています。暴れてきつく締まってしまったら大変です。

ネットに絡んだ雄のニホンジカ

場所は、道路のすぐ横です。

真ん前の農家からお婆さんが出てきて、

「昨日の夜から、音がしててなあ」

とのこと。

私は頭を下げて、

「すみません、ハサミを貸して下さることは可能でしょうか?助けたいので・・・」

お婆さんは迷っていました。貸すのを渋ってではなく、まさか私が本気で助けようとしているとは思わなかったようです。

でも、すぐに植木バサミをひとつ出してくださいました。

ゴンを近くの電柱に繋いで、ハサミを持って、シカさんのところにいきました。

当然ながら、シカはますます暴れています。

例によって、丁寧にお願いしました。

「あなたを助けたいの。しばらくじっとしていてくれる?動いていたらハサミで切れないの。大丈夫、大丈夫だから」

そっと近づいて、まず、頸にからんだロープを切りました。ハサミは良く切れました!

でも、私の手が触れたことで、シカはビクンと前に飛び出し、私はあっさり跳ね飛ばされました。

もしあれが、攻撃を目的とした角突きだったら、私は大怪我していたでしょう。

けれど、驚いて跳ねたシカに、私が当たっただけです。私は怪我ひとつしていません。

それでも私がいとも簡単にふっとんだので、シカの方も力関係を悟ったようです。

「なんだ、こいつ、俺の体重の半分くらいしかない小さなメスじゃないか」

と同時に、私にまるで殺意とか悪意がないことも伝わったのでしょう。

警戒しつつも、その後は驚くほどじっと大人しく、動かないでいてくれました。

お陰で、無事に切り離すことができ、シカさんは元気に山に帰っていきました。

角の先端にまだネットの切れ端が引っかかったままでしたが、木にこすれば多分とれるでしょうし、もしとれなくても、角の生え代りで一緒に落ちるから全然問題無し。

あ~良かったぁ!

ずっと倉庫前で待ってくれていたお婆さんにハサミを返して何度もお礼をいいました。

お婆さんは、ポカンとした表情で

「えらい大人しかったなあ?」

と答えただけでした。多分、まさか本当に救出できるとは思っていなかったのでしょう。

あのようなとき、ニュースでは、何人もの屈強な男たちが動物を押さえつけて対応してますから。でも、救出出来ちゃったんですよね。私のような小柄なおばちゃんが一人で、借り物の植木バサミ1本だけを持って。

不思議といば不思議。

しかし、私ひとりだったからこそ、シカさんも大人しくしてくれたのだろうと思います(多分、体臭もヒト臭より猫臭がきつかっただろうからね?www)。

つい最近、砂防ダムに落ちたイノシシ2頭の救出が、ニュースで騒がれていました。市の職員の男たち?が、何人も取り囲み、取材のメディアも取り囲み、さらに一般人の野次馬までうようよと。あれじゃあ、イノシシでなくても警戒して興奮してしまうでしょう。

橋の作り方も、見るからに、なんというか・・・。穴の中央に向けて、板の橋をかけていたのですが、板の両側は何もありませんし、あんな平均台みたいな橋を衆人環視の中、野生動物が登るでしょうか?

(いえ、イノシシの習性はわかりませんけど・・、ウサギやハムスターの場合、ケージの壁にくっつけて坂道を作ってあげないと、なかなか登ってくれません。だから多分、イノシシも同じじゃないでしょうか。)

【注意!!】

雄のニホンジカは体重50-130kgもある動物です。角で突かれれば、人間は大怪我をします。野生のシカには、決して安易に近づかないでください!

ネットは危険!

このシカさんは幸い助けることができましたが、誰にも気づかれずにジワジワと衰弱死してしまうシカさん他野生動物は少なくありません。

以下はすべて、裏山の写真です。愚かな植林計画の結果、ニホンジカやニホンカモシカの命が失われただけでなく、麓では土石流が発生して度々クレーン車の出番となってしまいました。

この通り、見事なまでに皆伐・禿山化してから植林した結果、
土石流
麓は大雨・台風のたびに土石流。
植林を守る目的で山の中に無駄に張られたネットには、シカが絡まり、亡くなりました。
ぐるぐるによじれたネットがどれほど苦しんだかを語っています。
その、よじれたネットの下には・・・
すでに白骨化していました・・・
こちらはニホンカモシカさん。言わずと知れた、特別天然記念物です。
あと数日早く通りかかれば、この子を助けられたのかもしれないと思うと悔しい。

上記のように、とくに林業で山奥に張られるネットが問題になります。このように植林地全体をネットで囲んでいる景色を見かけますけれど、あれ、百害あって一利なし。ネットは破れたり隙間ができたりで、たちまち野生動物達が入り込むようになります。が、ネットで囲まれているために、また出口を見つけるまでその中で暮らさざるをえなくなり、つまり、必要以上に苗を食い荒らすことになってしまいます。

苗を守りたいなら、一本一本を狭く囲む方がずっと効果的。手間でしょうが、ぜひそうしてください。

【ニホンジカ】

  • 亜種:エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、マゲシカ、ヤクシカ、ケラマジカ、ツシマジカ
  • 別名:シカ
  • 学名:Cervus nippon
  • 分類:哺乳鋼鯨偶蹄目ウシ亜目シカ科
  • 分布:北海道~九州、ベトナム~極東アジア(中国東部、ロシア沿海州、台湾、朝鮮半島)。またヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカに人為的に導入され野生化。
  • 大きさ:最大はエゾシカ、最小はヤクシカ、♂の方が大きく体重比にして♀の1.5倍以上になる。頭胴長♂90-190cm、♀90-150cm、肩高♂70-130cm、♀60-110cm。体重♂50-130kg、♀25-80kg。
  • 形態:夏毛は茶色に白い斑点、冬毛は灰褐色、大きな白い尻班がある。角は毎年生え変わる。
  • 食性:草食。
  • 繁殖:交尾期9月下旬~11月、出産5月下旬~7月上旬、通常1仔。

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