梅尭臣(ばいぎょうしん)【漢詩、北宋】
【文献で詠われた猫たち】シリーズ。
梅尭臣(ばい ぎょうしん)
きな様が教えてくださった猫漢詩です。
以下、きな様の投稿文をコピペさせていただきます。
「中国詩人選集二集・第三巻 梅尭臣」(岩波書店・1962年初版)より
『猫を祭る』
五白(ごはく)の猫を有(も)ちてより
鼠は我が書を侵(おか)さず
今朝(こんちょう)五白死せり
祭りて飯と魚とを与う
之を中河に送り
爾(なんじ)を呪するは爾を疎にするに非ず
昔 爾 一鼠を噛み
銜え鳴きて庭除(ていじょ)を巡れり
衆鼠(しゅうそ)をして驚かしめんと欲す
意は将に(まさに)我が盧(いおり)を清めんとするなり
一たび舟に登り来たりてより
舟中(しょうちゅう)屋(おく)を同じくして居る
糢糧(きゅうりょう)甚だ薄しと雖(いえ)ども
漏窃(ろうせつ)の余を食らうことを免かる
此れ実に爾の勤むる有ればなり
勤むる有ること鶏猪に勝る
世人は駆駕(くが)を重んじ
馬驢(ばろ)に如かずと謂う
やんぬるかな 復(また)論ずることなかれ
爾の為に聊か(いささか)欷歔(ききょ)せん
*五白…おそらく猫の名。ぶち猫かも?
*糢糧(きゅうりょう)…干し飯などの乾燥食料
*欷歔(ききょ)…むぜび泣くこと
【意訳】
五白と暮すようになってからネズミは私の書物をかじらなくなった。
その五白が今朝、死んでしまった。ご飯と魚を供えて弔い、川の中ほどまで見送って穢れをはらったけれど、それは決しておまえを粗末に思ってのことではないよ。
以前、おまえはネズミを咥えて鳴きながら庭をぐるぐるまわったことがあったね。あれはネズミたちを脅して私の住まいから追い払おうとしてくれだのだろう?
舟に乗ってからずっと同じ船室でともに暮らしてきた。食べ物はとぼしかったけれど、ネズミの余り物を食べずにすんだ。これはまったくもっておまえのおかげだ。役に立つという点では、鶏や豚よりずっと勝っている。世間の人は走らせたり引っ張らせたりできる馬やロバに重きをおくけれど…。
ああもう言うのはやめよう。おまえを偲んでむせび泣くよ。
梅尭臣について
ばい ぎょうしん。1002年~1060年。
北宋・11世紀前半の詩人。