アポリネール『動物詩集』より【詩、フランス】
【文献で詠われた猫たち】シリーズ
ギヨーム・アポリネール
まずは、日本一の猫好き作家・大佛次郎氏も大好きだと書いている詩。
Le chat
Je souhaite dans ma maison:
Une femme ayant sa raison,
Un chat passant parmi les livres,
Des amis en toute saison
Sans lesquels je ne peux pas vivre.
猫
私が我が家に望むもの
分別のあるひとりの妻と
本の間を歩きまわる一匹の猫と
彼ら無しではどんな季節も
過ごせない友人たちと。
『動物詩集』より
大佛氏は、「ほんとうにそうだと思う、それだけだと思う」と絶賛している。 (『猫のいる日々』徳間文庫)
もっとも、詩としてのできばえに感心したというのもあるだろうけれど、おそらくはそれいじょうに、猫好き作家としての本音のような気がするけれど。
『動物詩集』には、猫ではないが、ネコ科の動物、ライオンの詩もある。
Le lion
O lion, malheureuse image
Des rois chus lamentablement,
Tu ne nais maintenant qu’en cage
A Hambourg, chez les Allemands.
ライオン
おお、ライオンよ、痛ましくも
失位した王の哀れなイメージよ
もうお前はドイツはハンブルグの
檻の中でしか生まれない。
ギヨーム・アポリネールについて
Guillaume-Apollinaire de Kostrowitsky
1880~1918年。
ポーランド系の両親からローマで生まれパリで死す。 詩・小説・演劇を書き、画家ピカソとも親交があった。 陽気で多才、超現実派など前衛派の先頭に立って活躍した奇才の詩人だった。 ‘シュールレアリズム’は彼の造語。
代表作『アルコール Alcools』、『カリグラム Calligrammes』など。
参考文献
- 「アポリネール詩集 (新潮文庫) 」 堀口大學訳
- 「猫のいる日々」 大佛次郎 徳間文庫