ノミ・ダニ駆虫剤などの薬品について
まず知っておきたい、愛猫を守るための雑学 =「医薬品」と「医薬部外品」=
医薬品はなんとなく分かるような気がしますよね。
病院や薬局で医師や薬剤師が処方・販売してくれる薬のこと?
でも、よく見かける「医薬部外品」って、医薬品とどう違うの?
まず、国語辞典を調べてみました。
医薬品=病気の治療に用いる薬品。薬事法によって製造・販売・取扱が規制される。製造には厚生大臣、販売には知事の許可が必要。
医薬部外品=薬品のうち、人体への作用が緩和なもの、およびこれらに準ずる薬品で厚生大臣の指定するもの。吐き気・体臭・あせも・ただれ・脱毛の防止、育毛や除毛、ネズミ・ハエ・カ・ノミ・ダニなどの駆除を目的とするもの。
講談社カラー版 日本語大辞典 第二版
別な言い方をすれば、「医薬品」は病気や怪我を治療するという明確な目的(効果・効能)を持っているものであるのに対し、「医薬部外品」はどちらかというと予防に重点を置いたもの、ということのようです。
以下に引用するのは、農林水産省消費・安全局長が財務省関税局長宛に出した通知(16消安第11103号 平成17年3月31日付け)から引用したものです。なお文中で「人体」という言葉が使われていますが、それも原文のままです。
「動物用医薬品」とは
動物用医薬品とは、次に掲げる物をいう。
ア 動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品および衛生用品をいう。以下同じ。)でないもの(動物用医薬部外品を除く。)
(例)抗生物質製剤、ワクチン等
イ 動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(動物用医薬部外品を除く。)
(例)麻酔剤、睡眠鎮静剤、解熱鎮静剤、ホルモン剤、外用剤等
「動物用医薬部外品」とは
動物用医薬部外品とは、次に掲げることが目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具等でないもの及びこれらに準ずる物で農林水産大臣の指定するものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている物並びに動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物を除く。
ア 吐きけその他の不快感又は口臭もしくは体臭の防止。
(例)防臭剤、薬用石けん、薬用シャンプー等
イ あせも、ただれ等の防止
(例)皮膚保護剤等
ウ 脱毛の防止、育毛又は除毛
エ 動物の保険のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止
(例)防虫剤、殺虫剤、殺そ剤等
オ その他
(例)忌避剤等
「動物用医療機器」とは
動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって、薬事法施行令(昭和36年政令第11号)で定めるものをいう。
(例)縫合糸、注射針および注射筒、人工授精用器具等
*以上、以下を参考に作成しました。
【ホームページ】
・農林水産省 動物医薬品検査所
【資料】
・講談社カラー版 日本語大辞典 第二版 (ISBN:4-06-125002-7)
殺虫剤の種類と特徴
市販されている殺虫剤や忌避剤(ノミ・ダニ・蚊・その他衛生害虫を駆除や忌避するための薬など)は、いくつかのタイプに大別されます。
【薬品名】のうち、太字になっているのは、ペット用商品で使用されていることが確認されたものです。
ピレスロイド系
【特徴】
シロバナムシヨケギク Chrysanthemum cinerariaefolium から抽出された殺虫成分ピレトリン類、および、それに化学構造的に類似した合成化合物群をいう。
効力が強く、即効的麻痺作用(ノックダウン効果)があるが、蘇生が認められるため、致死効力を増強するために共力剤を配合する例が多い。
人など温血動物に対する毒性は相対的に低いが、魚毒性は一般に高い。
【薬品名】
アレスリン(ピナミン)・dl・d-T80アレスリン(ピナミンフォルテ)・イミプトリン(プラル)・エトフェンプロックス(レナトップ)・シフェノトリン(ゴキラート)・シフルトリン(レスポンサ-、β-シフルトリン)・シラフルオフェン(シロネン)・d,d,-T80-プラレトリン(エトック)・トラレトリン(ザオール)・ビフェントリン(アリピレス)・ピレトリン(ジョチュウギクエキス)・フェノトリン(スミスリン)・フタルスミン(ネオピナミン)・フラメトリン(ピナミン-D、プロスリン、ピナミン-Dフォルテ)・ベルメトリン(エクスミン)・レスメトリン(クリスロン、クリスロンフォルテ)・
カーバメート系
【特徴】
カルバミン酸エステル化合物。
体内に取り込まれるとコリンエステラーゼ活性阻害をおこし、その結果、痙攣を起こして呼吸が止まり死に至る。
このグループは農薬としては多数使用されているが、衛生害虫用としては少ない(プロポクスル)。
【薬品名】
フェノブカリブ(バッサ)・プロポクスル(ノビマックス) ・メトキサジアゾン(エレミック)
昆虫成長制御系(IGR)
【特徴】
昆虫の幼虫期の脱皮や変態(蛹化)をコントロールしているホルモン(幼若ホルモンや脱皮ホルモン)によく似た働きをする物質を投与することで、本来のホルモンバランスを狂わせ、キチン質の合成を阻害するなど正常な脱皮や蛹化をできないようにし、結果的に死に至らしめるる殺虫剤。
温血動物や昆虫以外の生物に対する毒性がきわめて小さく、また殺虫剤抵抗性に交差性がない。
なお IGR は Insect Growth Regulator の略。
【薬品名】
ジヘルベンズロン(デミリン)・シロマジン(ネポクレス)・テフルベンズロン(ラルバノール)・トリフルムロン(ヨモベッド)・ピリプロキシフェン(スミラブ)・メトプレン(アルトシッド)・ルフェルノン(プログラム)
共力剤
【特徴】
それ自体には殺虫力はないか、あっても弱いが、ある種の殺虫剤と混合したときに、主剤の殺虫力を増進させる薬剤。
共力剤は昆虫体内で酸化酵素形を阻害して殺虫成分が解毒されるのを制御するものと考えられている。
【薬品名】
IBTA・オクタクロロジプロピルエーテル(S-421)・サイネピリン500・サイネピリン222(MGK264)・ピペロニルブトキサイド(PBO)
忌避剤
【特徴】
忌避剤とは、殺虫を目的とする殺虫剤と違い、害虫の侵入を防止する目的で使われるものである。
人畜に直接処理してカやブユなどの吸血性昆虫から人体を守るもの(人体用忌避剤)と、ゴキブリなどの匍匐性の害虫が特性の場所に侵入しないようにするもの(侵入防止剤)とがある。
【薬品名】
MGK-11MGK-326・ディート(ジエチルトルアミド)
有機リン系
【特徴】
リン酸エステル化合物。
体内に取り込まれるとコリンエステラーゼ活性阻害をおこし、その結果、痙攣を起こして呼吸が止まり死に至る。
殺虫効力は優れており、安定性もあるが、酸やアルカリで分解されやすい。
魚毒性は低い。
【薬品名】
アザメチホス(アルファクロン)・クロルピリホスチメル(ザーテル)・クロルピリホス(レントレク)・ジクロルボス(DDVP)・ダイアジノン・テメホス(アベイト)・トリクロルホン(ディプテレックス)・ピリダフェンチオン(オフナック)・プロチオホス(トヨチオン)・プロペタンホス(サフロチン)・フェニトロチオン(スミチオン)・フェンチオン(バイテックス)・ホキシム・マラチオン(マラソン)
有機塩素系
【特徴】
戦後、BHC,DDTなど広く使われて大きな効果を上げたが、自然分解しにくいため、地球規模の環境汚染問題や体内蓄積問題をおこし、現在では多くが製造や使用を禁止された。
【薬品名】
オルトジクロロベンゼン(オルソジクロルベンゼン)
【参考ホームページ】
以上は下記サイトを参考に管理人がまとめました。
・ 東京都生活文化局消費生活部 くらしの安全情報サイト
・ 大阪府健康福祉部環境衛生課
・ 名古屋市衛生研究所
・ 日本防疫殺虫剤協会
・ 環境機器株式会社
各有効成分の特徴と副作用について
管理人は獣医師でも薬剤師でもないため、以下はすべて、信用できる(と思われる)サイト等調べたことをまとめた物です。
もし万が一、間違い等がありましたら、ご連絡いただければ幸いです。
なお、資料や副作用などの検索結果は2006/5/10現在のものです。
※以下、薬品名アイウエオ順
アレスリン、dl・d-T80アレスリン
allethrin
ピレスロイド系殺虫剤。
アレスリンは、即効性に優れ、熱安定性がよいため、蚊取り線香や蚊取りマット/リキッド等、家庭用殺虫剤として広く利用されている。
dl・d-T80アレルリンは、アレスリンの光学・幾何異性体で、殺虫効力はアレスリンより強い。
アレスリンの分子式:C19H26O3
【副作用等】
哺乳類に対しては一般に毒性は低いが、新生・乳児は毒性感受性がより高い。
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
イミダクロプリド
クロロニコチニル系。
ノミの神経細胞シナプス後膜のニコチン性アセチルコリンレセプターに作用し、正常な神経伝達を遮断する。
分子式:C9H10ClN5O2
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ1件。
(1)雄猫、3歳、既往症=先天的心奇形,漏斗胸
副作用=死亡
投薬との因果関係=不明
エムペントリン
empenthrin
ピレスロイド系殺虫剤。
分子式:C18H26O2
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
サイネピリン222、サイネピリン500
共力剤。
ピレトリン・アレスリン等と併用すると、相乗的にその殺虫力を増強する。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
ジョチュウギクエキス(ピレトリン)
pyrethrum extract, pyrethrin
ピレスロイド系殺虫剤。
唯一天然由来の殺虫剤で、シロバナムシヨケギクから抽出されたもの。
光によって分解されやすい。
即効性が大きいが、ノックダウンした虫が蘇生することがある。
残効性は低い。
低毒性のため、蚊取り線香やエアゾールなどの家庭幼殺虫剤に多用される。
分子式:C22H28O5
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
ベルメトリン
ピレスロイド系殺虫剤。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
d・d-T-シフェノトリン
ピレスロイド系殺虫剤。
高い致死活性と残効性を持つ。
ゴキブリ用のエアゾール剤や燻煙剤などに使用される。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
ディート(ジエチルトルアミド)
deet
忌避剤。
給血昆虫用の人体塗布忌避剤として市販されている製品のほとんどに含まれている。
カ・ブヨのほか、ノミ・イエダニ・ツツガムシなどに有効性が認められている。
【副作用等】
急性毒性 : 皮膚炎、目刺激性、神経障害
慢性毒性 : 繁殖毒性、胎児への影響
○「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
○ディートは安全な化学物質とされ世界中で大量に使用されているが、副作用の報告がないわけではない。アメリカの防疫センター(CDC)や米環境保護庁(EPA)では(人間への)使用法の注意を呼びかけている。そのごく一部を下記に掲載する。
・露出している皮膚のみに使用し、衣類の下には使用しないこと。
・切り傷や傷、刺激された皮膚には決して使用しないこと。
・目や口には使用しない。耳には控えめに。
・吸入したり飲み込んだりしないこと。
・室内に戻った後、使った皮膚を石鹸と水で洗うこと。
また、カナダ保険省では、6ヶ月以下の幼児にディートは使ってはならないとしている。
トランスフルトリン
ピレスロイド系殺虫剤。
分子式:C15H12Cl2O2
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
ニテンビラム
nitenpyram
ピリジン系。
分子式:C11H15CIN4O2
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
ピリプロキシフェン
pyriproxyfen
昆虫成長阻害剤。
昆虫の幼若ホルモン活性が高い化合物。
ハエ・カ・ユスリカ・チョウバエ・ネコノミなどの幼虫に、高い羽化阻害活性、殺卵、産卵抑制活性を示す。
残効性がある。
昆虫のみに作用し、哺乳動物に対して安全性が高い。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ1件。
(1)雄猫、3歳、既往症=先天的心奇形,漏斗胸
副作用=死亡
投薬との因果関係=不明
フェノトリン
phenothrin
ピレスロイド系殺虫剤。
即効性は劣るが、ノックダウンした虫の蘇生率が低いために高い致死率が得られる。
残効性に優れる。
生体内での分解、排泄が早く、人畜に対する毒性が低いことから、人体に直接使用できる殺虫剤として、シラミ駆除用のシャンプー剤などに利用されている。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
フィプロニル
fipronil
フェニルピラゾール系。
フィプロニルはノミやマダニなどの神経細胞のGABAレセプターにのみ強く作用するので、犬や猫、人間等には安全とされている。
分子式:C12H4Cl2F6N4OS
【副作用等】
水生動物に強い影響を及ぼす。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ1件
(1)雌猫、7歳 既往症=定期的な下顎の掻痒感
副作用=死亡
薬品との因果関係=無いと考えられる (他の農薬による中毒と考えられる)
メトキアジアゾン
metoxadiazone
オキサジアゾール系。
基本的にはカーバメート剤に属するが、アセチルコリンエステラーゼ阻害の他に、神経軸系への影響もある。
ゴキブリ用燻煙剤に使われる。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ無し
メトプレン
methoprene
昆虫成長阻害剤。
昆虫の幼若ホルモン様物質。
昆虫がこれを体内に取り込むと、ホルモンバランスをくずし、羽化が阻害され、結果として死に至る。
人畜毒性はほとんどないとされている。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当データ1件
(1)雌猫、7歳 既往症=定期的な下顎の掻痒感
副作用=死亡
薬品との因果関係=無いと考えられる (他の農薬による中毒と考えられる)
ルフェヌロン
昆虫成長阻害剤。
昆虫のキチン形成阻害剤として働く。
イヌやネコの経口的に接種させることにより血中に移行し、これを給血したノミ成虫の参下卵に影響を及ぼす。
【副作用等】
「農林水産省動物医薬品検査所副作用情報データベース」による検索結果=猫では該当無し
【注意】
これらの薬品は、いずれもかなり安全と言われ、だからこそ市販が許可されたものではあります。
しかし殺虫剤である以上は劇薬の一種であることにかわりはありませんし、また副作用の報告例がみつからない場合でも、では副作用の可能性はゼロかといえば決してそうとは言い切れません。特に死亡するなど重篤な副作用でない場合、単に飼い主や獣医師が報告を怠っただけという可能性も否定できません。
できればご使用の前にかかりつけの獣医さんにご相談ください。
使用の際は説明書を良く読み、注意書きに従ってください。
病気や怪我をしている猫、持病のある猫、妊娠中の猫、幼少・老齢の猫など、体力的に不安のある場合は、投与前に必ず獣医師に相談してください。
【参考ホームページ】
この章は下記サイトを参考に管理人がまとめたものです。
・農林水産省 動物医薬品検査所
・東京都生活文化局消費生活部
・大阪府健康福祉部環境衛生課
・名古屋市衛生研究所
・ 日本防疫殺虫剤協会
・環境機器株式会社
・環境汚染問題