豚という家畜
こんなニュースが報じられました。
『遺伝子改変したブタの腎臓を人に移植する「異種移植」の臨床試験(治験)を計画する明治大発ベンチャー「ポル・メド・テック」(川崎市)と、実施予定施設の湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)は21日、同病院で記者会見し、2028年にも始める治験用のブタの生産を開始したと明らかにした。同社は27年度に治験届を提出する方針。』
47NEWS > 【速報】腎移植治験用ブタ生産開始 明治大発企業と実施病院
2026年07月21日 21時15分共同通信
ヒトとブタは、臓器を交換できるほど、近い関係だと言うことです。
それほど、私たちに近いブタたち。現在、日本国内だけで、8,798,000頭の豚が飼育されています。これはイメージ的には大阪府の人口 8,837,685人と同じくらいの数です。
うち、肥育豚は、7,362,000頭。埼玉県の人口 7,44,765人と同じくらいの数ですが、この豚たちは肉を取るためだけに太らされ、生後半年余で解体される豚たちの数です。豚の寿命のギネス記録は23歳にもなるんですけれどね。
また、子取り用めす豚は、758,300頭。福井県の人口 766,863人と同じくらいの数ですが、これが妊娠ストールや分娩ストールで「出産機械」として扱われる豚たちの数です。これらのストールはちょうど豚の体と同じくらいのサイズで、豚たちは体の向きを変えることさえできません。母豚たちはその狭い場所に何ヶ月も、ときには一生、閉じ込められて暮らします。
残りは種つけに使われる雄などです。
(ref : e-Stat 政府統計の総合窓口 > 畜産統計/豚飼養戸数・頭数累年統計 2024年度)
ちなみに、世界的には、中国の427,430,000頭がダントツ1位。以下、ぐんと減って米国が74,905,000頭で2位、3位はブラジルの43,915,000頭、日本は世界19位の飼育頭数だそうです。
(ref : GlLOBAL NOTE / 世界の豚飼育数 国別ランキング・推移)
ところで、ブタという動物はイノシシを家畜化したものであることはご存じだと思います。今でも分類学上は同じ種(Sus scrofa)ですし、イノシシとブタは簡単に交雑します(イノブタ)。

そのブタたちは、1万年くらい前に、ヨーロッパとアジアで別々に家畜化されたと考えられています。そのため現在でも、たとえばヨーロッパ産のブタのゲノムDNAは、アジア産のブタより、ヨーロッパの野生イノシシにより近かったりします。ブタに様々な品種があるのも納得です。
家畜化で豚におこった変化
家畜化により、ブタは大きく変えられました。主な変異は次のとおり。
●肋骨が増え、胴が伸びた
より肉が多く付くように、胸椎(背骨)と肋骨の数が増やされました。一般的な野生イノシシの肋骨の対数は13〜14対ですが、品種改良されたブタは15〜17対に増加しています。その結果、胴体も長く寸胴体系になりました。
●発育が早められた
イノシシは体重が90kgになるのに1年以上かかりますが、ブタはわずか半年でその体重を超えます。
●早熟になった
イノシシは性成熟するまで2年以上かかりますが、ブタはわずか6~8ヶ月で交配可能となります。
●出産頭数、乳頭数、および出産頻度が増えた
イノシシはふつう年1回、3~8頭(平均5頭)出産しますが、ブタは年2~3回、平均10頭以上~最大で30頭近く産む体に改造されました。
それにともない、乳頭の数も、イノシシの5対に対し、ブタでは7~8対に増加させられました。

ところで、最近の日本は、連日40℃の酷暑超えの地域が出るなど、大変に暑い夏となっています。
家畜化によりブタの体毛は大きく減少した一方で、イノシシよりはるかに分厚い皮下脂肪を蓄えるようになりました。皮下脂肪が増えると熱が体内にこもりやすくなるのは、ヒトもブタも同じです。
ところが、ブタは汗腺が退化しているため、ヒトのように全身で汗をかくことができません。気化熱で体温を下げることができないのです。必然的に、ブタは暑さにとても弱い動物になってしまいました。
野生のイノシシであれば、地面に穴を掘ったり、水につかったり、水をたっぷり含んだ泥を体に塗りつけたりして(ヌタうち)、体温調節ができます。

では、暑さに弱い飼育豚たちは、日本の暑い夏をどのように過ごしているのでしょうか?完全冷房設備の整った快適な豚舎で悠々と寝そべって毎日ノンビリと暮らしているのでしょうか?
そんなワケありません!!
日本でブタたちがどう飼育されているか。スーパーに並んでいるヒレ肉やトンカツやハンバーグが、どのように育てられ、店頭に並ぶに至ったか。業者がばらまいている牧歌的なイメージではなく、絵本のメルヘンチックすぎる世界ではなく、本当の豚舎は、実態は、どんなものなのか。
家畜豚たちの正しい飼育環境をご存じでない方は、是非、つぎのブログ記事をご覧下さい。長くて辛い内容ですが、がんばって、最後まで読んでください。そして、ブタたちの置かれた状況を「我が身に置き換えて、具体的に」想像してみてください。
キリ様のブログ記事『チロ・ツグミ・メリー・マフユと 動物問題 ~ ヴィーガン ~』>『大豆のお肉 国産野菜炒め』
これが養豚業界の真実です。
ちなみに、ブタの知能は非常に高く、その学習能力や長期記憶は犬を上回ると言われています。非常に清潔好きな動物でもあります・・・本来は。
もうひとつのニュースから
MBC南日本放送
『豚が覆いかぶさった状態で発見 農場で倒れていた22歳男性が死亡・鹿児島』
2026年9月21日(月) 22:29
21日夕方曽於市の農場の豚舎で従業員の男性が豚の下敷きとなり死亡しました。
豚は重さおよそ300キロ、予防接種の途中だったといいます。警察などによりますと21日午後4時すぎ曽於市財部町のナンチクファーム財部農場で、「柵内で男性が倒れていて意識がない」と男性の同僚から消防に通報がありました。
倒れていたのはこの農場に勤める会社員渡邉怜士さん(22)で、豚が覆いかぶさった状態で見つかりました。渡邉さんは、病院に搬送されましたがおよそ3時間後に死亡。
目立った外傷はなく死因は窒息とみられています。豚の体重はおよそ300キロ、妊娠中の母豚で間口60センチ、奥行き2メートルほどの柵に1匹で入っていました。
渡邊さんは当時、豚に予防接種の注射を打つ作業中だったということです。
畜産などに詳しい鹿児島大学の小澤真 教授によると一般的な食用豚の体重は100から130キロほどで、300キロ台は繁殖向けの豚に多く、大型の部類に入ります。
【鹿児島大学 小澤真教授】
「人間と一緒で注射針刺されると、豚も痛いので暴れたり嫌がったりすることはまちがいなく想定はされる。相手が動物なので、急にどんな動きをするかというのはなかなか読めないところがある」警察が当時の状況などを調べています。
まだ若く将来のある方がこのような亡くなられ方をするなんて・・・。
男性のご冥福をお祈りします。
このニュースはヤフー!ニュース等では、もう少し簡単な内容でとりあげられていました。私が最初に見たのもそちらで、しかも驚いたことに、その下には心無いコメントがならんでいました。要するに男性を揶揄するようなコメントです。亡くなられた方に、よくもまあそんなことを書けるもんだと、すごく嫌な気分になったのですが、次に見た時はコメント欄ごと削除されていました。当然でしょう。恥を知れ、です。
しかし・・・
この事件で、もうひとつ、気になったことがありました。
最初に読んだ簡単な記事には「体重300キロほどある豚」とだけ書いてありました。それほどの体重であれば、種雄か、もし雌なら最大級クラスの成熟経産豚(バークシャー等の大型種)だろうと思ったのですが、妊娠中の大型な母豚とのことでした。そして記事によれば、この母豚さんがいれられていたのは「間口60センチ、奥行2メートルほどの柵」とあります。
検索によれば、300kgにも育った豚さんの体長は約1.6-1.8mにも達するそうです(鼻先からお尻まで、尾は含まず)。300㎏の巨体をいれるには、あまりに狭くないですか?
ちなみに、種雄であれば、体重は200㎏以上、中には300㎏に達する子もいます。そして種雄用のストールは一般的に、幅65cm〜70cm前後、長さ200cm〜240cm前後だそうです。
記事の「柵」よりはわずかに広いとはいえ、・・・いずれにせよ、それらのサイズ、人間にあてはめて考えれば、幅は大きめなソファの座面(55-60cm)くらい、長さは身長プラス10cmくらいのサイズ感でしょうか?
そんな狭い場所に何か月も閉じ込められたまま、スマホもない、マンガもない、音楽一つながれなければ、窓の外を眺める事すらできない。ただひたすら、そこで食べ、そこで寝、さらに糞尿もそこで垂れ流すしかない生活・・・
もしあなたなら、正気を保てますか?私なら、間違いなく、狂います。
事件の豚さんも、ものすごいストレスをため込んでいたに違いありません。まして、予防注射!豚さんには何のためのものかもわからないのですから、暴れてしまっても当然だと思わずにいられません。

日本の養豚場の90%が妊娠ストールを使っている
種雄の場合は、上記のような雄用ストールよりは少し広い「雄豚房(ボア・ペン」と呼ばれる個室で飼養されることもあります。あまりに狭い場所に閉じ込めらっぱなしでは体力が弱って射精もできなくなるかららしいです。
もっとも、広いと言っても、わずか4~6㎡程度。イメージ的には、最重量級のお相撲さん(250㎏くらい)が1坪(畳2枚分、3.3㎡)くらいの個室に何年も閉じ込められてるようなものです。
そして・・・
母豚たちはもっと悲惨です。
中でも悪名高い「妊娠ストール」。これは文字通り、身動きできない状態に豚を拘束してしまう「生きたまま缶詰にする」みたいなストールです。しかも、平均114日(約3か月3週間3日)といわれる妊娠期間中はずっと閉じ込められます。
出産時には「分娩ストール」に移されますが、そことて広いとはとても言えません。多少とも動きまわれるのは子豚たちだけで、母豚はほぼ拘束されたままです。
そして子豚たちが離乳すれば人工授精ののち妊娠ストールに戻されるの繰り返し。出産効率が落ちれば肉につぶされます。
EUはじめ妊娠ストールを禁止した国、禁止予定の国はいくつもあります。しかしアニマルライツセンターの調査によりますと「日本の養豚場の90%が妊娠ストールを使っていて、妊娠ストールフリーをコミットしている企業はほぼない」そうです。
(ref : https://www.hopeforanimals.org/pig/sow-stall-three-common-misconceptions/)
これが日本の養豚場の実態です。
日本だけではありません。世界で、豚肉を最も多く食べている国は中国ですが、中国には下の画像のような「養豚ビル」なんてものもあるそうです。

ここの豚たちは一生、土に触れることも、太陽の光を浴びることもなく、密集飼育でただ太らされて殺されていく。ブタは野生のイノシシを家畜化した動物で、イノシシはもちろん、家畜化された後の豚たちも、土堀りが大好きなのに。
日本は、中国から生の豚肉こそ輸入していませんが、シュウマイや肉まんなどの冷凍加工食品やレトルト食品は輸入しています。
豚肉を食べるということは、上記のような豚飼育をサポートするということでもあります。
そのことをどうか自覚してください。


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