猫の尿について
尿量、回数、色、においなど
以下、健康な成猫の場合です。
猫の年齢、食事内容や飲む水の量、季節、環境、その他により変化しますので
あくまで目安としてお考えください。
少しでも異常が認められた場合は獣医さんにご相談ください。
尿量
1日の尿量 = 体重1kgにつき、22~30mlが正常範囲
正常量の、およそ
- 2倍以上を多尿
- 1/2以下を乏尿
- 1/5以下を無尿
と考えます。
なお、多尿と頻尿を混同しないよう、ご注意ください。
猫の体重 | 1日の尿量の目安 |
2.0kg | 44 – 60ml |
2.5kg | 55 – 75ml |
3.0kg | 66 – 90ml |
3.5kg | 77 – 105ml |
4.0kg | 88 – 120ml |
4.5kg | 99 – 135ml |
5.0kg. | 110 – 150ml |
5.5kg | 121 – 165ml |
6.0kg | 132 – 180ml |
6.5kg | 143 – 195ml |
7.0kg | 154 – 210ml |
【参考】
猫が一日に採るべき水の量は、体重1kgあたり60mlが目安です。体重4kgなら240ml、体重5kgなら300mlの水が必要、ということになります。
※尿量に影響を与える疾病・病的状態
- 尿量の病的増量
- 慢性進行性腎疾患
- 真性糖尿病
- 腎性糖尿病
- 腎皮質低形成
- 腎アミロイド症
- 慢性化膿性腎炎
- 子宮蓄膿
- 副腎皮質過形成
- 下垂体腫瘍による尿崩症
- 尿量の病的減量
- 発熱
- 急性腎不全
- 慢性原発性腎疾患
- 循環障害による浮腫
- 血圧低下
- 尿路障害
排泄回数
排尿は、平均1日2~3回。
排便は、平均1日1回。
子猫は成猫より回数が多いのが普通です。
目が明かないような赤ちゃん猫はもちろん、生後1か月過ぎの子猫でも、自力排泄がうまくできない場合があります。幼猫が排泄しない(親猫や人間が世話しても排泄できない)ときは、獣医さんにご相談ください。
なお、捨て猫を保護した場合は、私の経験では、排尿がちゃんとできていれば、排便の方は、保護直後の1~2日は無い(できない)子が多いようです。捨て猫はお腹の中がからっぽで、出したくても出ない場合がほとんどですから。3日目になっても排便がなければ獣医さんにご相談ください。
尿の色
健康な猫尿の色は黄色~琥珀色。混濁は無く、透明です。
まだミルクだけの赤ちゃん猫の尿色はごく薄く、ほとんど無色で無臭。離乳食を食べるようになるにつれ、大人尿の色や臭いになっていきます。
次のような尿が見られたら、動物病院へ。
- 無色~淡い黄色
- 濃い黄色~褐色
- 黄褐色~帯緑黄色、振ると泡立つ
- 赤っぽい(赤、ピンク、ワイン色、褐色)
- 黒っぽい(黒褐色)
- 緑尿
尿色異常の例
- 真水=砂は白いまま
- 健康な猫尿=琥珀色の固まり。5歳の雄猫のものです。
- 高齢猫の尿=水と健康尿の中間の色、ほとんど水に近い色です。19歳8か月の雄猫の尿で、腎臓機能が弱り、多飲多尿になっています。
*使用猫砂【クリーンミュウ 固まる流せる白い紙製の砂】シーズイシハラ株式会社
詳細なレビューページは https://nekohon.jp/litter-wp/report-181/
尿の臭い
猫尿は臭いのがふつうであり、特に雄猫のマーキング尿はかなり強く臭います。
ミルクだけの赤ちゃん猫の尿は、ほとんど臭いません。離乳食を食べるようになると、尿にも臭いがつきはじめます。
猫尿は臭いとはいえ、猫も人と同じ哺乳類。尿臭の異常は、人間の鼻でもけっこうわかるものです。尿臭がいつもと違うと感じられた場合は、すみやかに獣医さんにご相談ください。
異常尿臭の例
- 薬品臭=投薬した、間違って薬品を飲み込んだ、など
- アンモニア臭=新鮮尿には実はアンモニアはごく少量しか含まれていず、健康な新鮮尿はアンモニア臭はしません。もし新鮮尿なのにアンモニア臭が強い場合は、尿路感染その他が考えられます。
- 腐敗臭、特別な臭気=細菌感染、ケトン尿など。
- 無臭=ミルクしか飲んでいない赤ちゃん猫を除き、大人猫の尿がまったく無臭というのも異常です。
↑子猫たちのトイレ跡
pH(ペーハー)
猫尿のpHは通常6.2~6.4くらいで、弱酸性。正常範囲はpH5.0~7.0です。
- 酸性=pH < 3.0
- 弱酸性=3.0 ≦ pH < 6.0
- 中性=6.0 ≦ pH ≦ 8.0
- 弱アルカリ性=8.0 < pH ≦ 11.0
- アルカリ性=11.0 < pH
※家庭におけるpHチェックについては、こちらのページもご覧ください。
尿のpH値は、食事内容によって、大きく変化します。肉食動物であるネコはpH5~7の間くらいで変化しますが、だいたいpH6.2~6.4程度が常態と考えるられるそうです。pHは家庭で簡単にできます。調べるときは、1回だけでなく、時間を変えて何回か行うのが良いでしょう。
なお、猫尿のpH値測定は、使い捨てのpH試験紙(リトマス試験紙)をお勧めします。pH計という測定器具もありますけれど、個人的にはおすすめできません(だって尿に浸すのですから、衛生上・・・苦笑)。
「pH試験紙」を探す
比重
猫尿の比重は通常1.015~1.060くらい、正常範囲は1.015~1.060です。
(比重とは、尿と、何も含んでいない水との重量比のこと。水を1としたときの尿の重量の割合であらわします。)
比重に関しては↓こんな商品もありますのでご参考までに。
アタゴ ポケット犬猫尿比重屈折計 PAL-犬猫尿比重
主に米国で用いられている犬用、猫用の尿比重目盛を搭載した犬猫用の尿比重屈折計。1台で犬用と猫用の尿比重が測定できます。プリズム面にサンプル (尿) を0.3ml滴下し、スタート・キーを押すだけで3秒後に尿比重をデジタル表示します。わずか11センチのコンパクトサイズで、測定後は水で洗い流すことが出来る防水仕様です。価格:31,000円くらい 。
製品名 PAL-犬猫尿比重 Cat.No. 4529 測定範囲 尿比重(犬)1.000~1.060
尿比重(猫)1.000~1.080
(自動温度補正)
温度 10.0~35.0℃分解能 尿比重 0.001
温度 0.1℃測定精度 尿比重 ± 0.001
温度 ±1℃使用環境温度 10~35℃ サンプル量 0.3ml 温度補正範囲 10~35℃ 測定時間 約3秒 電 源 単4アルカリ電池 2本 寸法・重量 55(W)×31(D)×109(H)mm, 100g (本体のみ) 防水保護等級 JIS-C0920 5級防噴流形
IEC規格529 IP65
※メーカーサイト:株式会社アタゴ 臨床検査器
*「犬猫尿比重屈折計」を探す*
正常尿のスクリーニング検査所見
【項目】 | 【猫の正常尿】 |
色調 | 黄色 |
混濁度 | 透明 |
比重 | 1.015 – 1.050 |
pH | 5.5 – 7.0 |
タンパク | 陰性 |
ケトン | 陰性 |
グルコース | 陰性 |
ピリルビン | 陰性 |
ウロピリノーゲン | 0.1 – 1mg/dl |
潜血 | 陰性 |
【尿沈渣(HPF)】 | |
赤血球 | 0 – 7 |
白血球 | 0 – 7 |
円柱 | ときに硝子様 |
上皮細胞 | ときどき |
脂肪滴 | 普通 |
細菌 | 陰性 |
結晶 | 普通 |
尿検査で分かる疾患
最初にお断りしておきますが、管理人は獣医師でも獣医学関係者でもありません。すべて以下の参考文献からの抜粋です。詳細はそれぞれの文献を入手してお確かめください。
1.全身的な疾患
真正糖尿病
糖尿(尿中グルコースの出現)、時としてケトン尿が見られる。
血液検査の高血糖と合わせて診断。
肝障害
尿中ビリルビンが陽性の場合、胆道、肝臓の疾患が疑われる。
(溶血性)血尿を来す疾患
白血病、紫斑病、うっ血性心不全、膠原病など。
腎前性乏尿あるいは低比重尿
乏尿は脱水、ショックなどによる腎血流量減少、肝硬変や腎不全の引き金になる。高比重は、糖尿病、脱水、心不全、ネフローゼ症候群、など。
その他
全身性アシドーシス、尿毒症性変化。骨髄腫、下垂体性尿崩症など。
2.腎疾患
ネフローゼ症候群、腎炎、変性症、などが主なもの。
その他、腎臓の発育不全奇形、水腎症、嚢胞腎など。
3.尿路系疾患
炎症性疾患
血尿、蛋白尿、白血球、細菌類、剥離上皮の出現、濃尿などが見られることで診断。
増殖性疾患
炎症性疾患の各症状と同時に剥離上皮細胞が多量に含まれる場合、粘膜上皮の過形成性肥厚、ポリープ、移行上皮癌など。
4.尿検査だけでは判断できません
多くの疾患で尿検査で判断できる部分は少ないそうです。しかし尿検査をすることで考えるべき病気の範囲を明確にできることも多く、可能な限り積極的にすべきでしょう。
参考文献
以上、すべて、以下専門書(印刷物)および私自身の猫経験に基づいた記載です。私自身は獣医師ではありませんし、獣医学的訓練/職場等の経験も無いことをお断りしておきます。
獣医学臨床シリーズ17『尿検査』
- 主幹:友田勇、長谷川篤彦
- 出版社:学窓社
- ISBN:4873626161 9784873626161
カラー写真も多く、詳細に説明されています。獣医学専門書ですから高いし(9000円)、誰もが買うべき本ではないかもしれませんが、愛猫のことを真剣に考えている人であれば、持っていて決して損のない一冊だと思います。
小動物VT講座『犬と猫の泌尿生殖器疾患』
- 編:中村孝・松田浩珍
- 出版社:インターズー
- ISBN:4900573329 9784900573321
猫と泌尿系疾患は、残念ながら、切っても切れない悪縁ともいえるもの。難しい専門書ではありますが、愛猫を若くして尿路結石等で失いたくない人におすすめの本。
『ポイント解説 犬と猫の尿・血液検査マニュアル』
- 著:Carolyn A. Sink ; Bernard F Feldman
- 監訳:梶ヶ谷博(かじがや ひろし)訳:早川典之(はやかわ のりゆき)
- 出版社:株式会社インターズー
- ISBN:9784899953067
オールカラーで、実用的に作られた一冊です。