御不浄物語

「御不浄物語」とは、なんとも尾籠な話だと お叱りを受けるかもあい知れませぬ。 ですが、御猫様との同居生活の中では、どうしてもこのような話題を避けて通る訳には いかないのでございます。

御不浄、つまり、おトイレのお話でございます。

雪隠とか、憚りなどの言葉とともに、 御不浄という言葉ももはや死語となりつつありますが、 わたくしなどは、残して置きたい日本語だと思っております。 何故と申しますに、「おトイレ物語」では、なんともセンスがなく、 かとて「便所物語」では、いかにも品がなく、 やはりこのような場合は「御不浄物語」と、 言いしたくなるではございませぬか。

御不浄という言葉がなくなりますと、少々不便になると思うのでございます。

さて、御猫様用の御不浄と言えば、やはり箱と砂でございます。 昔昔は硯箱の蓋などという、優雅な入れ物をその用途に使ったそうでございますが、 今はもっぱらそれ専用の市販トイレが使われております。 形はいたってシンプルな箱形のものから、 砂落としやら、扉やら、脱臭用換気扇までついた豪華な物もございます。 うちで使用しておりますのは、プラスチック製のフード付き市販トイレと、 台所用水切り、それから、、押入収納ケース(大)でございます。 また、猫砂は、それこそトイレ以上に様々な種類が市販されておりますが、 おから製を中心に、その時その時のバーゲン品(燃やせるタイプ)を 適当に混ぜ合わせて使っております。 お陰様でうちのねこ達は、どんな容器にいれられたどんな砂でも、 抜群の適応能力をもって用を果たしてくれるようになりました。

しかし、その抜群の適応能力が、時には、問題となるのでございました。 トロが米びつを猫トイレと間違えてしてしまった話は、すでにいたしました。 あれなどは、わたくしも、間違えてしかるべしと納得できるものでございましたから、 まあ仕方なかったのでございます。

トイレの中のトロ

けれどもそれだけでは済まされなかったのでございます。

うちには15坪ほどの小さな家庭菜園がございます。 そこで採れた里芋、もともと5株しか植えておりませんでしたので、 全収穫といってもコンテナボックスに半分くらいのものでございました。 コロコロと丸い里芋を、泥付きのまま、ボックスにいれて、 とりあえず勝手口の土間に置きました。 ボックスには一応新聞紙のふたをしておきました。

しかし、そんなふた、ねこ達にとっては無いも等しかったのでございます。 翌朝見たときには、・・・・ 泥付き里芋は香ばしい香りの、茶色い液体の中に、ちゃぷんちゃぷんと浸かっておりました。

“箱”の中に“砂土”状のもの。

「お、今度のトイレは本物の土じゃん! ワイルドだぜ~~い」 と、ねこども、喜んで、全員でお小水されたのでございます。

いくらわたくしが猫好きでも、一晩お小水に浸かった里芋を食べる気にはなれませぬ。 植えてから収穫まで9ヶ月かかる里芋は、こうして、あえなく全滅してしまったのでございました。

さて、 春になって、家庭菜園では、エンドウ豆の収穫時期となりました。 エンドウ豆と申しますより、グリーンピースと申した方が、今の方にはわかりやすいやもしれませぬ。 サヤに入ったままの豆を、箱に入れました。 なにしろ今回は目にも鮮やかな緑色ですし、豆のサヤは猫砂の粒よりかなり大きなものでございます。 里芋と違って泥はついておりません。 まさか大丈夫だろう、と、油断したのが、・・・

甘かったのでございました。

今回もやられました。 緑の豆にしたたる液体。

あまりに柔軟すぎる応用力のねこ達なのでございました。

応用力といえば、何も“箱”にはいった“砂”状のものばかりではございません。 臭いにも大変賢く反応いたします。

洗濯物の上で粗相されるという事件が続きました。 誰がやっているのか、うちには7ニャンもおりますので、なかなか犯猫がわかりませぬ。 どれほど洗濯かごを綺麗に洗っても、またされてしまうのでございます。 とうとうフタ付き洗濯かごに買い換えて、騒動は収まりましたが、

・・・・・わたくしは今でも疑っているのでございます。 ねこ達は、パパの使用済みパンツの臭いに反応して 「ココはトイレだ」と判断したのではないかと。 と、申しますに、 集中攻撃を受けていたのは、いつもパパのパンツだったのでございます・・・

おつう猫トイレ中

おつう 「前に落ちているモノは、見ないでくだしゃい。ちょっとだけ、間に合わなかっただけでしゅから」