悪戯帖その1
米騒動の巻
まだ生後5ヶ月くらいの、ほんの子猫だった頃。
トロがトイレでやけに気張っているのです。 ニンゲンなら、赤い顔してウンウンって感じで。
心配で見ていたら、ブリブリってウンニョをしました(汚くてごめん)。
そのウンニョが、普通ではないのです。茶色い中に白いツブツブがぎっしりつまっていて なんというか、クランキーチョコのアーモンドがもっともっと 大きくてぶさいくな感じ(今後クランキーチョコを食べられなくなったらごめん)。
最初は「ネコカイチュウか、条虫が出てきたか?」と思いましたが それにしては様子が変です。 「寄生虫の卵?」とも疑いましたが、どうも違う。
割り箸でツンツンつついて調べているうちに、 「!もしやこれは?」 早速、棚に置いてあった米袋を見ると、
・・・ やられている、やられている。真新しい米袋の中央が引き裂かれていて周辺は米だらけ。
そうです、生米を食べて、それが消化されずにそのまんま、出てきていたのでした。
どうして生米なんか食べたのか、謎です。
でも、出すだけ出した後、 「すっきししたニャン!」と元気に遊び始めたので 少なくともお腹はこわさずに済んだようでした。
その「生米事件」からしばらく後。
うちの米櫃は、単純な箱形の、プラスチック製の安物です。 ふと見ると、ふたが少々汚れていたので、 ふただけ外してシンクでざぶざぶ洗いました。
洗ったふたを布巾で拭いていると
ザッ、ザッ、ザッ
と、聞き覚えのある音がするのです。
「まさか」と振り向いたときは もう遅い!
すでに、米櫃で、たっぷりと チーを済ませたトロが、 盛んに砂かけ、否、米かけをしている最中ではありませんか。
「やだ、トロちゃん、そこトイレじゃないのにィ。 間違えちゃったの~」
「ウンニャ♪」
箱の中に粒状のモノ・・・そういわれてみれば なるほど、猫トイレと似ていますよね。 これではトロを叱れません。 叱るどころか、トロの応用力の高さを誉めてあげなければならない場面です。
「あーあ、しょうがないなあ。このお米、やっぱ もうつかえないよねえ」
3キロほどあったはずのお米を見ながら、ため息・・・
一方トロはたいそう得意顔。
「ウニャーン、ニャ!ニャアオ、ニャアオ」
もしかして、
「新しいトイレ、早速ためしてみたけどさあ。 今度の砂、良くないよ。固まらないんだもん! トイレもね、狭すぎるよ。もっと大きいのにしてよ!」
とでも言っていたのでしょうか。
まあ、少なくとも、また生米を食べて お腹こわしちゃうよりはマシかな?
トロたん直伝・驚異のダイエット法!
トロたんは、7キロ超。いくら骨格の太い雄猫でも、ちょっとおデブです。
その、トロたんの秘伝中の秘伝、必殺の超ダイエット法、絶対痩せる!すごい技を、 ここに公開しちゃいます!
なんせご本人が実施して、わずか2ヶ月でみごと、 7キロ超から6キロまで減量してみせたのですから、 効果抜群、必ず痩せること請け合いです。
では、どうぞ。
はーい、ボク、トロでーす。 ボクの内緒の減量法、そっと教えまーす。
ボクね、この方法で1キロ近く痩せたの。 1キロって言ったって、ネコの1キロだもの。 ニンゲンなら10キロくらいだよ。 すごいでしょ?
ボクの秘策中の秘策、幻のダイエット方法、それは
ジャーン!! 名付けて、カメムシ・ダイエット!!
方法は簡単だよ!
- カメムシがブーンと飛んできたら、追いかける! 爪研ぎの最中だろうが、トイレの最中だろうが、かまわず追いかけること!
- カメムシを捕まえたら、狩猟成功の喜びにひたりながら、なーんにも考えずに ゴックンと飲み込む。
- すると、くっさーーい臭いがもわぁ~~って井の腑の底からこみ上げてきて、 おもわず、何もかも吐いちゃう。
- その結果、胃の中が空っぽになる。 胃が空でも、口の中が臭くて臭くて、当分は食欲はわかない。
- 臭いがとれたら、また(1)~(5)を繰り返す。
このダイエットでもっとも重要なのは、何回吐いても、においが消えると同時にカメムシは臭いという事実を、ころっと、きれいさっぱり、忘れちゃうことにゃん。カメムシを見つけたら、純粋に興奮し、カメムシを捕まえたら、素直に喜び、 臭いがただよってくる前に、、無邪気に飲み込んじゃおう!
【ちゅうい】
カメムシは臭いということを、すぐに学習してしまうようなネコやヒトには このダイエット方法は向きません。
じゃあね~っ
頑張って痩せてにゃん!
他の猫:「アンタ以外の一体だれが、そんなダイエット、実行するっちゅうのよ」
追伸:
トロがあまり頻繁にゲロゲロするので、とても心配しました。でも、そのゲロゲロの中にいつもカメムシが泳いでいたのです・・・・
その後、トロは、約2ヶ月かかって、カメムシは臭いという事実をようやく覚えたのでした。その結果、体重はリバウンドし、今また7キロ超です。
おヒゲを切ったのは誰?
去年の冬、トロを定期ワクチンに連れて行きました。トロをみた獣医さんは、私を叱りました。
「ネコの髭を切ってはいけませんよ!」
トロのお髭は、根本から1センチくらいのところで、1本残らず、プッツリと切られていたのです。
でも、もちろん、私はトロの髭を切ったりはしません。うちには、ネコの髭に悪戯するような、幼い子供もいません。 なぜ、髭が無いのか、わかりません。 他の猫たちは、皆、ふさふさと長い髭を優雅に揺らしています。 自分でかみ切れるような位置ではありません。
やがて、トロの髭は生えてきて、皆そのことはすっかり忘れてしまいました。
また、寒い時期になりました。
ある日、ふと見ると、またトロの髭が片側だけ、無いではありませんか。
「その髭、いったいどうしちゃったの?
どうして片側だけ、無いの?」
「んにゃ」
前回と同じです。根本1センチくらいのところで、鋭利な刃物で切られたように、プッツリと無くなっているのです。 片髭のトロは、いつもにも増しておトボケ面で、とてもおかしいのです。 でも、ご本人は全く意に介していない様子。 平然とのそのそ歩いています。 あんな片髭で、暗闇の中、右側ばかりぶつかるとかしないのかなあ、バランスはちゃんととれているのかなあ、あ、でも通常でもネコとは思えぬ運動神経の鈍さ、 片髭でも大差ないのかな、なんて、思っていましたが。
うちには、シマリスのくるみちゃんがいます。もう7歳余、トロの倍以上の年齢です。うちに来たときにもう大人で、人慣れしていなかったので、 ケージから出ることはありません。
だから、怖いモノ知らずです。
鈍猫トロといえども、ネコはネコ。リスの身軽な動きには狩猟本能をそそられるのか、よくケージに額を押しつけて、じっと見ています。くるみの方は、ネコなんかてんで馬鹿にしていますから、平気なものです。
ある冬の寒い日のこと。
その日もトロは、ケージにべったり顔を押し当てて、くるみを見ていました。くるみは、ひょこひょこと寄ってくると、 ケージの金網の隙間から、そのちっちゃな前足を差し出して、トロの髭をたぐり寄せました。
そして、プッツン!
なんと、髭を噛み切ったのです。
トロは、お目々を真ん中にぎゅっと寄せて、じっと見ています。
また、くるみは髭をたぐり寄せて、プッツン! するどい切歯で噛み切ります。
あれよあれよという間に、トロの残っていた方の髭も全部噛み切られ、くるみは、その髭を頬袋に押し込んで、巣箱に持っていってしまいました。トロの髭は、くるみの巣材にされていたのです!
これには、さすがの私も唖然。全然、想像だにしていませんでした。そりゃ、確かに純毛かもしれないけれど・・・。
シマリスに髭を全部噛み切られてしまうネコって? トロたん、あんた鈍すぎだよ!