ファイル3:ハレー彗星の謎

名探偵・麗尾智美矢五郎(レオち みゃごろう)の事件簿シリーズ

雪が降ったらしい。 ところどころ、白いものにおおわれていた。

と、突然、足下を白い筋が走り抜けていった。 ハレー彗星の様に白い尾を長く残しながら。

台所に行って、事態がようやく飲み込めた。 部屋中に散らばった白い粉。 そして、部屋の隅に転がっている、引き裂かれた小麦粉の袋。

ただちに全関係者が招集された。

ちびまる太、みけ、ビクは、何も付けていなかった。 チャトランは足の裏に、おつうは足の裏と鼻先に、 それぞれ微量の小麦粉をつけていた。 そして、怪猫トロ面相は、首の裏まで全身粉だらけだった。

名探偵・麗尾智 美矢五郎は、トロ面相を指さして叫んだ。
「犯人はお前だ。 雪と思われたのは、小麦粉の粉だ。 ハレー彗星もお前だ。
粉だらけで走り回ったから、 小麦粉が振りまかれて白い尾を引き、それが彗星の尾のように見えたのだ」

怪猫トロ面相はたちまち引っ捕らえられ お裁きの砂州に引き立てられた。

(と、ここで舞台は暗転、突然 “遠山のニャンさん” になる。)

遠山のニャンさん、別名、名探偵・麗尾智 美矢五郎は、 壇上に厳かに構えている。 トロ左右衛門こと、怪猫トロ面相は、白砂に神妙に控えている。

「その方、」 とニャンさんは威厳に満ちた声で、 「訴えによれば、 夜中に台所の戸棚に忍び込み、 小麦粉の袋を食い破って中身を散乱させた上、 床でごろんごろんして体中に小麦粉をなすり付け、そのまま、体ナメナメもせずに走り回って、家中粉だらけにし、のみならず、 ママの足に体当たりして、 ママのジーパンも粉だらけにしたそうな。 しかと相違ないか」

「そんにゃことよりねえ、」 と、トロ左右衛門。 「この白砂、にゃかにゃか良さそうにゃ! 穴掘りやすそうだし、埋めやすそうだよ。 ボク、催しちゃった。 早速、掘り掘り」

「あ、あ、あ、こらぁ! 今はお裁きの最中なんだぞ!」

あわてる遠山のニャンさんを尻目に、 ・・・はい、文字通り‘尻目’に、 トロ左右衛門、ゆうゆうと用を為す。

「ち~~~~~・・・ くるり。 ザック、ザック、ザック。 ああ、すっきりしたにゃ~」

遠山のニャンさん、トロ左右衛門の所作に いきり立って、大声をあげた。 「おうおう、ふてえ野郎だ。 そうやってしらばっくれる気か。 白状しない気だな。 このおかか吹雪が目に入らぬか」

そう叫んだ遠山のニャンさんは、ぱっと 高級花カツオの未開封パックを取り出して見せた。 それを見たトロ左右衛門のお目目はキラキラ星のように輝いて、 たちまち下記の如く白状した。

「そうだよ~~~♪♪ やったのはボクにゃのぉ。

・・・昨日はね、朝ご飯に猫缶を3ニャン前食べたのぉ。 さすがに夕ご飯はあまり多くは食べられにゃくて。 2ニャン前しか食べにゃかったのぉ。 そしたら、夜中にお腹ぺこぺこになっちゃって。 我慢できにゃいから、前にそうめんを盗み食いした戸棚に潜り込んだんだよ。 にゃんかにゃいかにゃあ、って。

しっかし、小麦粉にはまいったにゃあ。 まずいし、むせるし、もうコリゴリだよ~ ね、ね、ボク全部しゃべったから、 その花カツオ、早くちょうだいっ♪♪♪」

ママが陪審員となって トロ左右衛門ことトロ面相には速やかに 下記判決が決定された。

「即刻シャンプーの刑、執行猶予無し。」

粉だらけなトロ

*この麗尾智 美矢五郎シリーズは、実際にあった話を 思い切り脚色して書いています。

猫

 怪猫トロ面相、または、トロ左右衛門

猫

 名探偵・麗尾智 美矢五郎、または、遠山のニャンさん

名探偵レオ「吾輩に解けぬ謎はにゃい!」