チロリンの猫生
チロリン、現れる

.
2014年4月。どこからともなく現れた白猫。
体はすでに大人サイズでしたが、まだ若い猫と思われました。たぶん3歳にもなっていない。ガリガリといってよいほど痩せていて、警戒心が非常に強く、まったく人馴れしていませんでした。今まで、どこでどうやって生き延びてきたのか。
白い猫なので、「シロ」からの音の連想で「チロ」→「チロリン」と名付けました。
その後もきたりこなかったり、どちらかといえば来ない日のほうが多く、なかなか保護できずにいました。
ようやくうちの庭にほぼ定住してくれるようになったのが、7月になってから。

保護しようと捕獲器をしかけましたが、入ってくれません。捕獲器の中においしいご飯やオヤツをいれたり、捕獲器にカバーをかけたり、周囲に物を置いてカムフラージュしてみても、入り口から奥を覗き込むだけで全然入りません。ほかに食べ物を得られないらしく、捕獲器の中のごはんもたべてくれないと、みるみる痩せていきます。仕方なく、捕獲器の外でも毎日ごはんをあげるように。
しかし、私がちょっと近づいただけで、この形相です。
「シャーッ!!来るな!!」

怪我と去勢手術
2014年9月、背中に怪我をしているのを見つけました。

なんとか捕獲して治療しようとしたのですが、あいかわらず、用心深すぎて全然近づけませんし、捕獲器にもはいってくれません。
幸い、この頃にはすっかり庭に定住していましたので、体はふっくら栄養が行き届いてきました。
「こんニャものに、このボクが入るわけないでしょ!」

しかし、今回は私もあきらめませんでした。試行錯誤し続けること・・・なんと40日・・・大汗
ついに捕獲器に入った!!

この時にはすでに背中の怪我はきれいに治癒していましたから、怪我の治療ではなく、去勢手術に連行しました。
チロリン、庭で平和に暮らす
これほど警戒心が強い猫は、家にいれても人馴れは難しいでしょう。しかも当時、わが家には8ニャンもいて、すでに満杯状態。かといってこんな性格の猫、里親募集したところで、簡単に良いご縁が見つかるとも思えず。
去勢手術後はまた外にリリースすることにしました。

外には、同じような経緯で同じく外猫としてくらしているヤマちゃんがいます。2ニャンはとても仲が良く、いつも一緒で、これならお外生活もさびしいどころか、むしろ猫にとって自由で理想的な生活といってよいくらいではないでしょうか。





おなかいっぱいキャットフードを食べて、あとはヤマちゃんと遊んで。プクプクに太りました。
チロリン、衰弱する
2024年の夏は、まだふっくら綺麗な姿をしていたのですが、

翌2025年、衰えが見えるようになりました。体も痩せてきました。


このときも捕獲を試みたのですが、10年も前のことをまだ覚えているのか、捕獲器にはいることは断固として拒否されました。もちろん、あいかわらず触ることさえ許されません。
私も今回は無理はしませんでした。
チロリンは10年以上も、私の庭で、ヤマちゃんと一緒に楽しく暮らしてきたのです。猫として、その一生は、最高に理想的とはいえないかもしれませんが、決して不幸なものでもなかったように見えたのです。
この猫はこのまま自然にまかせた方が良い。私にはそう思えました。
チロリンは、山のほかの動物達ともうまく折り合いながら暮らせる猫でした。この2枚はいずれも今年2025年5月の画像です。写っているキツネはアユム、アナグマは穴吉です。


チロリン、虹の橋を渡る
2025年11月13日の朝。
いつものように、朝ご飯をあげに庭に出ると、チロリンの姿が見えません。待っていたヤマちゃんに「チロリンは?」と聞いてみました。すると、いつもは寡黙で鳴かないヤマちゃんが、
「ニャア、ニャア、ニャア、ニャア、ニャア・・・」
と10回ほども連続で鳴いたのです。

私に猫語はさっぱりわかりません。けれどもヤマちゃんのメッセージははっきりと伝わりました。
重い心で、チロリンを探しに行きました。縁の下、茂みの中、畑やその周り、果樹園・・・
うちの茗荷畑の横に、チロリンは横たわっていました。

夜の内にここで、のようでした。死後硬直はまだ始まっていませんでしたが、虫が集り始めていました。
チロリンの体をスーパーワイドタイプのペットシーツ2枚でくるみ、一輪車に乗せます。つるはし、シャベル、ノコギリ、園芸鋏をもって、うちの動物霊園まで押していきました。
動物霊園は、山裾の雑木林の中にあります。私が農地を取得したときに付いてきた小さな土地で、すぐ横には本物の昔の墓地もあります。すでに元所有者によって墓標などは移転され、今は荒れ果てていますが、骨は地中に埋まったままでしょう。

この画像の、石垣の木が並んだ後ろ側が、私が動物霊園にしている場所です。
まずツルハシを打ち込んで土をほぐしてから、シャベルで土を掘り出します。林の中なので、土の中には縦横無尽に木の根が走っています。太い根は手鋸で切り、細い根やひげ根は園芸鋏で切りながら、穴を掘り進めていきます。

山のどうぶつたちに荒らされないよう、なるべく深く掘ってチロリンの体を埋めました。かつての仲間ベロちゃんとまるちゃん、私が路上でみつけた小春ちゃんが横に並んでいます。数メートル離れた野生動物エリアには、アナグマのガー吉やトンビのびーさん他、多くの動物達が眠っています。寂しくはないでしょう。
チロリン、安らかにお休み下さい。つぎももしまた猫に生まれてくるなら、猫が大好きなお金持ちの家の猫として生まれかわってください。
合掌。
ベロちゃん。

まるちゃん。

(おまけ)
よくサスペンスドラマ等であるじゃないですか。殺人犯が、シャベル1本を持って、夜中にこっそり山の森の中に死体を埋めるシーン。あれを見るたびに、私は「嘘だ」って思っちゃうんですよね。森の中って、木の根が多いんです。縦にも横にも根が張っていて、まるで土の中にいくつも網が張ってあるようなものです。その森の土を、人間ひとりの体を埋められるほどの大きさ+深さに穴を掘るとなれば、そりゃあ大変な労働でしょう。まして穴掘りになれていない都会人なら、少し掘っただけで木の根に妨げられて、シャベル1本じゃにっちもさっちもいかなくなる可能性が高すぎます。
未開墾の土地、とくに木が生えている場所に動物さんを埋葬するときは、シャベルの他に必ず、根を切れる刃物の類いも持参してください。
.


