拝啓 レオ殿

レオの大好物は刺身。 中でも一番の好物は、マグロの刺身(ただし生限定。解凍は嫌い)。

レオは賢いネコなので、刺身が食べられるのは ママが車で買い物に出かけたときだけということを ちゃんと記憶している。 だから、買い物に行った日は 夕食時にはレオも食卓の横にきちんとお座りして 刺身をくれるのを行儀良く待っている。

しかし、ある日、車では出かけたけれど、 別の用事だったので、うっかり刺身を買ってこなかった。 レオは、例のごとく、きちんとお座りして待っている。 仕方ないから鰹節でごまかしたけれど。

私が布団に入ると、突然
「にゃお、にゃお、にゃお」と、 レオが騒ぎ出した。
「どうしたの。何かあったの?」 いつもはあんなに大人しい良い子なのに。

布団から抜け出してレオの後をついていくと
「にゃお、にゃお、にゃお!」
と鳴きながら、まっすぐ冷蔵庫の前に行き、 冷蔵庫の扉を前足でカキカキして 私の顔を恨めしそうに見あげた。
「今日、出かけたんでしょ。お刺身、あるはずでしょ。 忘れて寝ちゃうなんてひどいよ。ボク今まで待ってたんだよ」
どう見ても、そう言っているように見える・・・

「ごめんなさい!レオ様!許して! 今日はお刺身ないのよ!買ってこなかったの!」
「ニャッ」

仕方ないから、カニカマをあげた。
「ママ、忘れたんだね。ひどい・・・」
傷心の面持ちで、私をじっと見つめた後、 レオはまずそうにカニカマを召し上がった。 そして、 食べ終わるなり、さっさと私の布団にもどり
「何してるの!寝るよ!」
と、先に寝てしまったのだった。

こんな時のレオにはホントかなわない。

猫

「お、今日の刺身は7切れ。 ママ2切れ、 ボク5切れだな。 よしよし」

レオのこだわり

レオはプライドの高い猫だ。 主人は常に自分。 決して人に命令されたり、服従を強いられたりするのは我慢できない。

だから、絶対に、人に抱っこされたりはしない。

いや、膝に乗るのは大好きなのである。 冬の間は、私が少しでも腰をおろすと、すぐさま膝に乗りにくる。 でなければ、ちょっとかがんだ背中に飛び乗ってしまう。 でもそれは、あくまで「自ら乗る」のであって、「抱っこされる」のではないのだ。

例えば、私が座っている。 レオがそばにやってくる。 もちろん、私の膝で寝たいのだ。 それならと、私がひょいとレオを抱き上げて、膝にのせたりしようものなら、 レオは両手両足をつっぱって、実に嫌そうな顔をする。 そして、私が腕の力をゆるめたとたんに、逃げ出してしまう。

が、 狭い部屋をぐるりと一周だけして、すぐまた戻ってくる。 そして、私に抱き上げられるより先に、膝に飛び乗ってくるのだ。 あくまで、抱き上げられるのはイヤ、自分から乗るのでなくちゃダメ、なのだ。 そうして、膝に乗ると、 レオの儀式として、グルグル二回ほどまわって位置を決め、 私の膝や胸をモミモミして甘え、 丸くなって寝てしまう。

どちらにせよ、膝で寝るなら、 私が抱き上げても、自分から飛び乗っても、同じようなものだと思うのだが 誇り高きレオにとっては、まったく別物であるらしい。

もちろん、膝から降りる時も、降ろされるのは我慢できない。 下手に抱き降ろそうとすると、ウウ~と唸って怒る。
「レオちゃん、そろそろ降りてくれないかな~」
と あくまでも優しく懇願すれば、
「頼まれたから降りるのではないぞよ。もう膝に飽きたから降りるのだ」
という顔をして、プイと飛び降りる。 内心は、ものすごい甘えん坊のくせに、 まるで素直に甘えてこないところが、実にネコらしくてよろしい。