他の猫たちのことなど

レオのこと

レオは、ヒト語がほぼ完全に理解できる我が家唯一の猫である。 ただし、本人はそうは思っていないらしい。 あくまで自分は、猫語が完全に理解できる唯一の人間だと思っているようだ。

我が家いちばんの甘ったれ猫は、実はレオである。 この子は、状況さえ許せば、一日24時間のうち、 23時間30分は膝に乗っているという猫だ。 ただし、寒い時期だけの話だけど。 夏の間は、もちろん、ネコはヒトの膝に長々と乗ったりしない。

レオは、私がちょっとでも腰を下ろすと、必ずやってくる。 ピアノを弾いているときさえ、膝にのってくる。 ピアノを弾く人はわかると思うが、演奏中の膝なんて、 とてもじゃないが猫がゆっくり寝ていられるような、静かな場所ではない。 第一、私の低い身長では、ひざは水平にはならない。 寝るにはあまりに角度が急な傾斜となる。 爪を立ててしがみついていないと、ネコのバランス感をもってしても、 たちまちずり落ちてしまう。 その上、ペダルは踏む、リズムは取る。 その揺れ方といったらハンパじゃないはずだ。

それでもレオは根性で乗っている。 仕方ないから、まず、ずり落ちないように足元に踏み台を置き、 膝の角度を水平にする。 するとペダルが踏めなくなるから、ペダルのあまりいらない、 動きもなるべく平坦な曲を選んで弾くことになる。

私がバッハばかり弾くのはレオのせいだ。

おつうのこと

おつうは、13ヶ月間も「オムツ猫」だった。 最初は市販の使い捨て紙おむつをつかったが、ペット用はなんせ高い。 10個入り1280円~1800円もする。 一日に5,6回は取り替えるから、その出費がバカにならない。

人間の新生児用紙おむつなら安いけれど、残念ながらサイズがあわず、 どう工夫してもすぐぬげて使い物にならなかった。 本猫も歩きにくそうだ。 その上、紙おむつだと、鋭い猫の牙爪で噛んだり引っ掻いたりして、じき破いてしまう。

そこで、人間女性用生理ナプキンと、 木綿布のオムツカバーを組み合わせて使うことにした。 ナプキンは、「極薄タイプ」なら2mmという薄さだから、 ペット用紙おむつよりも薄くて軽い。 しかも、うるさい人間女性を相手する商品なだけあって、 肌触り・吸収性・防臭性、いずれをとってもペット用より優れている。 商品数が豊かだから、サイズも、シッポ穴さえ開ければ、 ちょうどよく収まるのがみつかった。

オムツカバーは、ペット用使い捨て紙おむつに原型を取り、手縫いした。 最初の4作は失敗。 改良を重ねた5作目でようやく、猫のうごきを妨げず、走り回ってもはずれず、 糞尿も漏れないという、まあまあ納得のいく物が出来上がった。

1枚では洗濯もできないので、一大奮起してミシンを買い、 生まれて初めてミシンを使った。 おつうは一応女の子だから、色とりどりの可愛い布で、 リボンを付けたり、テープを巻いたり、最終的には12枚くらい作ったと思う。

そのように工夫はしても、オムツが取れたのはやはり嬉しかった。 本猫も嬉しかったに違いない。

チャトランのこと

チャトランは、私がお風呂に入るたびに心配そうにやってくる。 そして、出るまでドアの外で待っている。 ようやくお風呂から上がると、 「生きてる?無事だった?良かったねえ」 とでもいうように、ペロペロ舐めてくれる。 膝から下はタオルが要らないくらいに。 とても可愛いし、気持ちはありがたいが、ひどく煩わしいし、ザラザラ痛い。

猫を呼び寄せるには

朝は、モーニングコーヒーを味わいながら、新聞を広げて、ゆっくりと読む。 ・・・なんてことは、もちろん、絶対にできない。 まずチャトランがやってきて、読んでいる記事の上でゴロゴロする。 つぎにみけが紙面で爪研ぎを始める。 最後にちびまる太が新聞の中にヘッドスライディングする。 

呼んでも来ない猫を呼び寄せるのは、簡単だ。 新聞を畳に広げて読めばよい。

おつうのこと、ふたたび

おつうは、その古風な名前に似合わず、 「ギャオッ」とG音で鳴く。 「グワー」とか「ガァーアー」とか鳴く。

一度でいいから、チャトランのように 可愛い「ニャオン♪」という声を、おつうから聞いてみたい。