猫とネコとふたつの本棚動物の本日本の野生動物の本>井上雅央「山の畑をサルから守る」 
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「 山の畑をサルから守る 」
おもしろ生態とかしこい防ぎ方
井上雅央(いのうえ まさてる)

農山漁村文化協会
2002年発行 NDC : 615.86
ISBN : 9784540011276

 

 

【推薦:管理人】

サルの、一番の印象は、手先がおそろしく器用な三次元動物だということ。
その次は、なんというか、もう、ずる賢いを通り越して、ふてぶてしいこと。

畑にサルがいたとする。腰の曲がったお婆さんが一人で「こりゃあ!」と大声を上げても振り向くだけで逃げない。お婆さんが畑の横で爆竹を鳴らすと、ようやく腰をあげてのそのそ立ち去るが、立ち去る先はすぐ隣の畑である。お婆さん一人では何も出来ないと見くびっている。爆竹も派手な音が出るばかりで被害はないとバカにしている。

お婆さんの横に私が立てば、つまりニンゲンが二人になれば、少し警戒する。が、少しだけである。女二人じゃたいしたことは出来ないと知っている。

さらに男の人が加われば、やっと退散する。とはいえ、山裾までである。隙あらばまた畑に戻ろうと狙っている。

本気で逃げるのは、犬連れで棒を持った男が来たときだけである。そのときは大あわてで逃げる。この辺は冬の狩猟シーズンとなれば猟師が猟犬を連れて鉄砲を撃ちまくるから、さしものサルも、男+犬+棒の組み合わせだけは怖いのである。たとえ猟師でなくても、猟犬でなくても、持っているのが竹筒でも、かなりな恐怖心をあおるようだ。しかしそれ以外は平気である。車ももちろん平気である。道路脇に陣取って、クラクションを鳴らしても悠々としている。

サルが去ったあとの畑は無惨だ。何が無惨かと言えば、その食べ方がいかにも汚いこと。ジャガイモはそこに生えている苗を全部引っこ抜いて、芋の中でも一番大きな芋の真ん中をガブリと囓る。大根も同じである。玉ネギも、人参も、サツマイモも、とにかく生えているものは全て引っこ抜いてから、美味しそうな実の美味しい部分だけを囓り取る。

「美味しい部分だけをひと囓り」は、キュウリやトウモロコシや、あの堅いカボチャでも同じだ。

また、サルは豆類も好きだが、シカならきれいに食べ尽くしてくれて、「ああよほどお腹が空いていたんだな」と同情もできるが、サルの場合は、これぞ「食べ散らかしのお手本」状態となる。豆づるに鞘が残らないほど、派手に引きちぎってうち捨ててあるが、捨てられた鞘の中には、しばしば豆が残っている。半分以上残っているものもある。手つかずのものさえある。食べるためではなく、ただ遊びで引きちぎっただけではないかと思えてくる。実際、遊んでいるだけの場合もあるようだ。まるで酒乱パーティーだ。

そして、お土産である。シカのように、コロコロな黒糞なら不潔感はさほど無い。サルの糞は、べちゃっとした筒型で、見ているだけで臭ってきそうな、緑がかかったウンコ色、多くはご丁寧にも路上や通路上の目立つところに残してあって、うっかり踏んだら最悪!家の真ん前にも堂々といたしてある。糞が落ちていれば人間としてはやはり掃除せずにはいられないけれど、犬の糞ならたいていスコップでころっと拾えるのに、サルの糞はスコップにもベチャリとついて、洗わなければならなくなる。ホント厄介なのである。

シカはネットで囲むだけでかなり防げる。イノシシもトタンとネットと電気柵を組み合わせれば、かなり防げる。クマはヒトが怖がるわりにほとんど実害はない。タヌキもほぼ無害だし、キツネやイタチはネズミを捕食してくれるから有益だ。大きな獣では、サルが一番の困りもので、防御も一番むつかしい。

サルが相手では、低いトタン板で畑を囲っても意味はない。ネットは高くても軽々と越える。シカ・イノシシに有益な金網は、サルにはネットより楽なハシゴでしかない。電気柵は間隔の広い場所を巧妙に探し当てて群で侵入する。中には温室の戸を開け人家内に入り込んで悪戯をするサルまでいる。ヒトと同じくらいに手先が器用で、ヒトに負けない知能を持ち、ヒトより小柄でどこでも入り込め、ヒトより身軽で跳躍力もあり、ヒトより生きることに必死で、しかも多くは群で来るのだから、もうどうしようもないのである。

つまり、観察していて、こんなに面白い動物はいないのである。周辺農家の目さえなければ!(苦笑)

『山の畑をサルから守る』でも、人々の四苦八苦が如実に表れていて、その攻防戦が面白い・・・といった怒られるだろうけれど、でも、私にはドロドロな戦いの連続、まるで戦記物のように感じられるのだ。こうすればああ、ああすればこう、そんなら次はこうしてやる、これでもか!と、人間が知恵の限りを尽くしている。決定打はないが、有効打はけっこうある。

そんな有効打の中でも有効率が高いもののひとつに「サル鉄砲」があるらしい、と知って、私も作りたくなった。本では白黒の小さな写真が載っているだけで、作り方はわからない。が、そこはネット社会の便利なところ。検索したらすぐに出てきた。材料は安い塩ビ管とロケット花火。切って、繋げて、たちまち一挺できあがり。畑に現れたサルの大群約30頭に向けて、ズトン!ではないな、花火だから、パァン!サルの奴、かなり驚いたらしい。慌てて山に逃げていった。以後5週間も私の畑には来なかった。われ勝利せり♪いや、楽しいね。

もちろん、サル鉄砲だけではサルには勝てない。何しろ賢い動物だから。本に書いてあることすべてを実行して、それでも勝てるかどうかはわからない。いずれは打ち破られる気がする。それでも。やらなければニンゲン側の完敗は確実なのだ。一矢でも二矢でもむくいるためには、本がばらけるまで熟読して、ひとつひとつ実行していかなければならないだろう。

ひとつだけ確信を持って言えることは。この本はサル害に悩まされる農家に必携の一冊です。

(2011.4.1.)

 

【付録:我が家周辺のサルたち】

↓集落の前の道路を、ぞろぞろ渡るサルの群。 このときは30頭以上いたと思います。 子ザルがかわいい♪

ニホンザル

↓雪の上に残された手足の跡。人間そっくりで、「はだしで雪の中を餌探ししているんだなあ」と思うとつい可哀想になり、うちの畑ならいくら食べてもイイよと言いたくなりますが、それを許すと鉄砲で狙われることになりますので、見つけ次第追い払わないといけません。

ニホンザルの足跡

↓窓の外を見たら、庭で毛づくろいをしていました。「あら、見つかっちゃった?」 「しゃーねーな、退散するか」。

ニホンザル

 

 

【目次】
Tサルとはどんな生き物なのか−知っておきたいサルの生活と弱点
1.餌を求めて、群で動く
2.離れザルは群の斥候!
3.食べると産まれる群の子孫
4.被害防止がサルの保護になる
5.サルにだって弱みはある

Uこれでは守れない防げないサルの害
1.集落のなかはグルメな餌場
2.被害は餌づけの先にあらわれる
3.山の畑は弱点がいっぱい
4.それでも失敗から、いま、何が必要かが見ててくる

Vあなたにもできるサル対策の実際
1.いますぐやれる経費ゼロの対策
2.サルと戦いやすい畑に変えていく
3.サルに負けない栽培法、畑の作業
4.楽に張れて、低コスト 簡易猿害防止柵《猿落くん(えんらくくん)》
5.《猿落君》設置の実際
6.とまどい、いらつき、あきらめた
7.サルが慣れない撃退グッズ「ひとしくん一号・二号」
8.ここまできたら集落丸ごとサルに強くなる
9.「防火」と「初期消火」だけでもサルは防げる

Wガンバレ!役所のサル対策担当者−支援態勢づくりノウハウ
1.支援部隊に必要な頭の生理
2.一緒にやる気構えが農家のやる気を生む
3.「サルチーム」手作りの猿害防止展示コーナー
4.集落のモデル圃場のつくり方
5.チョウチョウもダニもサルもみな同じ

「あの子ら、元気にしとるんやろか?」−おわりにかえて

*****著者プロフィール(本著より)*****
井上雅央(いのうえ まさてる)
昭和24年4月14日奈良県生まれ。愛媛大学大学院農学研究科修士課程修了。吉野農業改良普及所、奈良県農業試験場を経て、現在奈良県果樹振興センター。京都大学博士(農学)。専門分野は農生産システム管理と応用動物昆虫学。著書『ハダニ おもしろ生態とかしこい防ぎ方』(農文協)、『60歳からの防除作業便利帳』(農文協、共著)、『ダニと病気のはなし』(技報堂、共著)
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